温泉の話〜長野・鹿教湯(かけゆ)温泉〜

 その昔、長野・松本市に一ヶ月ほど泊り掛けで仕事をしていたことがあります。松本市をベースに南は駒ヶ根・飯田、北は大町と渡り歩き一ヶ月もの間仕事をしていました。投宿していた安宿は今でこそ無くなってしまいましたが、女鳥羽川沿いのこじんまりとした、なかなかに味わいのある宿でした。
 素泊まりで、帰っては飲みに出掛けてしまうので、寝られればそれで良かったのです。しかし、寝ることもそうですが風呂にも入りたいものです。共同の浴場があり、とは言っても普通の家庭の風呂場に巨大な浴槽が印象的でした。
 さて、帰って来て風呂に入ろうと蓋を開けるとお湯が7分目ほど。湯加減を見るとかなり熱いので水を出しながら温度調整をしながら、身体を洗います。ところが、ここで浴室の外に人影が。女将さんがやって来て、ぬるくなるからあまり水を入れてくれるな、と文句を言いに来ているのです。はいはい、と素直に言うことを聞いて止めて、身体を洗い流して入りますが、とても熱いのです。それはそれは足先を入れただけで引っ込めたくなるようなほど。尋常ではありません。水をチョロチョロと入れながら温度が下がるのを待ちますがなかなか下がりません。あきらめてお湯をを掛けて部屋に戻りました。
 あくる日、他の人に聞いても、やはり熱すぎるよねってことで。
 最初はせっかく長野に来たんだし、って目に付いた鹿教湯温泉という温泉に入りましたが、宿の女将さんとのやり取りを何日か続けた後、お風呂探しが日課になりました。
 さてそんないきさつでしたが、ここはレスラーなんかが湯治に来たりする程の所だそうで、病院なんかも山間の温泉街にありなかなかのものです。その当時入ったお湯は、その後取り壊され、新しくなりましてそれでもお湯の良さは変わらず。丁度イイ温度の柔らかいお湯は、宿のお湯に入れなかったせいもあるのでしょうが、とても心地よかったのを覚えております。
泉質:単純温泉 (弱アルカリ性低張性温泉)