お久し振りです、北極会・後編

八百屋にて

 一軒目の『久助』さんを出た我々の目指した先は、立ち飲みの『割烹くずし 徳多和良』さんです。ここは過去に何度か訪れて、立ち飲みながらそのポテンシャルの高さに一目置くお店です。立地条件は決して良くはないものの、最近では入ることもままならないほど、人気の高いお店で、余りグズグズしていると閉店時間が来るし、で難しいタイミングですがこの日は何とか入ることが叶いました。
 この日はやはり金曜日ということで、お品書きも目ぼしいものが消されている、いわゆるヤマの状態が多いのですが、写真のように〆鯖、キュウリと山菜のお新香、桜海老のしんじょといったいわゆる立ち飲み屋さんとはおよそ一線を画した品揃えを楽しむことができました。前回訪れた時の高評価とまでは行かない内容(お新香はやや塩辛く、しんじょはニュアンスの違うものを予想していたのでした)でしたが、こればかりは、まぁそんな時もあるだろうということでワタクシとHさんは納得しました。YちゃんとSちゃんは立ち飲みでこれだけのものが出て来て(実際は自家製ほやの塩辛も)、かつ飲み物を入れてもお会計が¥2,520(4人で)ということに軽いカルチャーショックを受けていたようです。
 時間的には午後九時過ぎ、HさんYちゃん、共にやはり『大はし』さんに行きたいようなので、『徳多和良』さんをお会計して急ぎ足ながら向かったのです(実際には『徳多和良』さんの営業終了の方が21時過ぎと早いのでこれが正解かも)。
 ワタクシの大いなる勘違いで、急ぎ足で『大はし』さんに到着したのは21時半を回ったところ。22時閉店21時半入店締め切りだと思っていたのですが、店内はまだまだご覧の通りギッシリ。30分ほど早めに勘違いしていたようです。でもそのお陰で少し待ってスンナリ座ることが出来たのですが。少し待つとテーブル席のグループがお帰りになったので、そこに席を構えました。
 焼酎(金宮焼酎)のボトルを特製の梅シロップと共に頼みます。HさんYちゃん、無論ワタクシもですが、目的はこの牛煮込みを含んだ『肉豆腐』、そして裏メニューの『豆腐だけ』。飴色に輝くこの豆腐の美味さはここにお連れした誰もが驚くものです。ワタクシは肉は要らないぐらいで、豆腐だけなら一皿(一丁)は余裕でいけます。久し振りに食べましたが相変わらずの美味さでした。
 季節柄、鱧の梅おとしがありましたのでそちらも。最初は時間的に無謀と思われた金宮のボトルも四人で飲めばそれほど時間も掛からずにそれぞれの胃に収まって行きます。生のままの焼酎に梅シロップを垂らしたバージョンではなく、炭酸二本が付いてくるのでそれで割ったため飲み易くなったのもあるのでしょうが。そうこうする内に、残業で遅れていた、今となっては『にこけん』でもお馴染みになったRちゃん♀からようやく北千住に到着したとのメールが届き、少しペースアップします。Rちゃんには先に次のお店である『萠蔵』さんに行っていて貰うことにしました。
 お店の前に見覚えのある自転車が停まっていて、思わずニッコリ、仲良くさせてもらっている優しい長崎弁が魅力の社長さんが居るのです。他に5店舗を切り盛りしているのでいつも居るとは限らないのです。
 さていつも楽しみなこちらのお通し。この日は先ほども頂いた『鱧の落とし』、『あん肝』、『つぶ貝』といったラインナップ。これだけでも充分楽しめます。ありがたいことにホッピーが置いてありますからワタクシはそれで乾杯。金曜日だからかいつもよりも混んでいましたが、相変わらずの居心地の良さと、居酒屋よりもワンランクアップのりょうりを楽しむことが出来ました。
 牛スジの煮込みは甘辛さが丁度良い塩梅で、思わず唸ってしまいます。それに特筆すべきはこの器。それぞれ味わい深いクラシックな器に盛られて出てくるのですが、それがこのお店の雰囲気とマッチしていて、流行の昭和レトロチックなお店では真似のできない本物の良さを堪能できるのです。もちろんこちらのお店も2000年からなので比較的新しいのですが、民家を改築し、古民芸をそれとなく配置し、こうした古い器を使うことによって醸し出す雰囲気はワタクシも十二分に評価出来ます。
 Rちゃんはまだ仕事上がりで一軒目ということもあって好きなものを頼んでくれるように言いましたが、それにしても皆の食欲の旺盛なこと!いや実際に美味しそうなメニューが多いものですから誰にも止められません。ホタテの炙り焼きに海苔を巻いて本ワサビをつけて頂きます。いやそれにしても酔っ払った勢いとはいえ、残ったワサビを海苔で巻いて食べたら辛かったことと言ったらなかったです。思いっきりむせてしまいました。最後には味噌汁と共に大変美味しいおむすびを頂いてそろそろ良い時間。どうもご馳走様、そしてお疲れ様でした。