肉じゃがの幻想

美味しい味噌汁は嬉しいもの

 スーパーでお会計をする時に、レジの脇に揃えられている雑誌の表紙を見るともなく眺めると、『夏に嬉しい簡単メニュー』だとか『5分で簡単、本格メニュー』などとどんなことが書いてあるのかなぁと読者の購買意欲をそそるような惹句(古い言い方ですね、コピーと言った方が良いのか…)で表紙を飾っております。そんな中で、以前見掛けたのは、『男性の好きなメニュー』だったか『男の大好きメニュー』とか、とにかく『あなた好みの、あなた好みの〜♪』という具合の『男の胃袋を鷲づかみ』的な不穏な雰囲気を漂わせるものでした。内容的には鳥の唐揚げ、生姜焼きといったガッツリの肉料理、そして定番の煮物、『肉じゃが』で男心をくすぐりましょう!的なものだったようでした。
 とかく、つき合い始めの女子、これから男の子のハートを射止めたいと思っている女の子向けには、この『肉じゃが』を男子に、更に言えば男子の部屋にお呼ばれして作ってあげると、高ポイントゲット!!、高感度アップ間違いなし!などと言われることが多いようですけれども、ワタクシは以前からそうかなぁと怪訝に思っていたのでした。

 ところがこの間、何の番組だったか忘れましたが(『ウチごはん』だったか、そのような類の料理番組)、ゲストが『男が好きなのは肉じゃがではなく、ごく普通に美味しい味噌汁を作ってくれた方が好ましい』という旨の発言をしておりました。PCでウェブ上を漂いながらTVを見ていたワタクシは、ハタと同意を得たとばかりに嬉しくなっていました。またその方は更に『女子は、食事の時に味噌汁がなくても平気だけど、男子には欠かせないものだ』との旨のことも言ってました。これにも大いに同意。別に水分だからと、お茶や水を一緒に出されてもやはりどこか違うのですね。そういうのは食後にゆっくりお茶でも頂ければ良いのです。
 ということで、定食屋さんなどで、メインのおかず、ご飯、味噌汁、お新香(タクアンが二切れ、もしくはシバ漬け少々)だけのシンプルと言えば聞こえは良いけど、拍子抜けするような組み合わせだったとしても、その味噌汁が予想を超えてビックリするような美味さだったりすると、思わず調理場のオヤジさん、もしくはオバちゃんの姿を目で追いかけ、オヌシやるなぁ、と心の中で呟いた、なんて経験のある方も多いのではないのかと思う今日この頃なのです。