だしマニアへの道Part.1

 ここのところ、手打ちうどんを作ったりしているうちに、出汁への興味が一層募ってきています。今までも出汁というと昆布を煮出して、鰹節を加えて仕上げる鰹出汁を専ら使って来てましたけれども、関西うどんの出汁は昆布が利いているし、讃岐うどんはいりこの出汁が濃厚で実に美味しいのですね。かつて宇都宮の友人宅に泊まった折に、夕食を作っていて味噌汁を作ったのですけれど、そのお宅にあった昆布が実に立派なもので、大きさはさほどでもなかったにも拘らず、実に濃厚な良い出汁が取れてその印象が非常に残っております。
 さて実家にいた頃から鰹出汁に慣れ親しんできましたが、昆布を使うようになったのはこちらの本を入手した辺りから。『月刊 専門料理』2001年4月号という本で、写真でもお分かりの通り、特集記事は『料理の基本 だし・フォン・湯(たん)』ということで和食・フレンチ・中華料理のそれぞれのダシを各界の著名なシェフが解説しております。その中で和食の基本の一番出汁について京都の『たん熊北店』さんと東京の『つきじ田村』さんの二通り掲載されていました。 
 京都の『たん熊北店』の一番出汁
《材料》

  • 昆布 100g
  • 鰹節 600g
  • 水  35L
  1. 昆布は一時間程加熱して沸騰直前の状態までもっていく。
  2. 鰹節をまんべんなく鍋の中に散らばるように加え、(鰹節が)水面を覆うと湯が沸き立ってしまうので箸で押さえ、すぐに火を止める。
  3. 鍋の火を止め鰹節が沈みかけたところで鍋の中身を漉す。

 東京の『つきじ田村』の一番出汁
《材料》

  • 昆布 35g
  • 鰹節 400g
  • めじ節 400g
  • 水 30L
  1. 昆布と水を鍋に入れる。冬は長時間、夏は短時間と適宜変える。
  2. 火に掛け、水が沸騰直前になり昆布がずっと浮く状態になると味見をし良ければ火を止める。
  3. めじ節と鰹節を加える。
  4. 削り節が鍋に沈むか沈まないかのうちにすぐに漉す作業に入る。
  5. だしがらを絞ると濁りやクセがでるので、決して絞ったり押さえたりしない。

 と材料の分量を較べてみると昆布重視の京都の『たん熊北店』さんと鰹節・めじ節重視の東京の『つきじ田村』さんの違いが如実に現れております。分量的には流石に料理屋さんだけあって使う量も半端ではありません。鰹節の少ない『たん熊北店』さんでも100gということはスーパーで売っている鰹節のパックは50gほど(お買い得品で¥298ぐらい)ですから、2パックが一度に使われるようなものです。
 ちなみにワタクシの場合、記事を書くに当たって計量してみると、昆布8g、鰹節20g、水4Lといったところ。これをおおよそ1週間ほどで使い果たします。そのままでは2・3日しかもたないので、冷ましたらすぐに密閉容器で冷凍してしまい、アイスピックで割りながら使います。でも出汁は引き立て(とりたて)が一番風味が良いので、冷凍してしまうと香りが飛んでしまいますので、解凍して使う時に料理によっては追い鰹(少量鰹節を足すこと)をします。
 ところで、関西うどんの出汁を調べているうちに、新たな発見がありました。常々、関西のうどんは昆布が効いているなぁと思っていたのですけれども、上記の二つの料理屋さんの材料の分量の違いももちろんあるのですが、水の違いというのも大いに関係しているらしいのです。関東が硬水であるのに対し、関西は軟水だということです。関西の水の方が昆布の出汁が出易いということだそうです。関東が関西に出汁の文化で及ばないのはここら辺に原因がありそうです。