今回の旅における醤油事情

ヤマキウ本醸造

 今回旅をして巡ったのは福島県新潟県山形県秋田県の四県。このうちスーパーで醤油のコーナーを調査したのは、福島県を除く三県で、新潟県新発田市のやや北にあるショッピングタウン中条、村上市の村上プラザ(ジャスコ)、山形県では鶴岡市ヤマザワ秋田県秋田市土崎のスーパー、マルダイとにかほ市マックスバリュMVにかほ店、戻って来て酒田市ヤマザワの6軒及び道の駅での販売所の幾つかです。味噌も同時に見たけれどそれほど興味深いもの、傾向ではなかったです。
 よく関東の人間からすると『九州の醤油というのは甘い』ということで驚きを以て衝撃の事実に直面するのですが、これが醤油に興味を持ったそもそものきっかけです。バイクで全国を旅するようになって以来、確かに九州ではその甘さに驚きつつも、伝聞の話は事実だったと感心しその後、関門海峡を越えて山陰地方から、関西北部を回った際にも甘い醤油が結構多いことに気がつきました。旅から帰ってくるとTVを見るにつけて(ワタクシTV番組は旅番組や料理番組の比率が大半を占める)、富山の醤油も甘いということを知りました。
 その後、甘い醤油が地方では少数派ではないと言うことに気がついたワタクシは、東北各地でも巡った結果、かなりの比率で甘い醤油が浸透していることが判りました。関東に住んでいる身としてはキッコーマン、ヤマサあたりはメディアでも相当宣伝しているし、スーパーの売り場でも見掛けます。普通の本醸造醤油以外にも、丸大豆醤油などキリッとした辛口の醤油、混じりっけなしの醤油というのが主流なのですが、そうした甘い醤油の販売され、消費されている地域では、『あまくち』、『うまくち』『新味(しんあじ)』といった関東では見掛けることのない同じメーカーでもラベルの異なるデザイン・配色の醤油が売られていました。

 ちなみに醤油というのは日本農林規格JAS)では、製造方法、原料、特徴などから、

  • 「こいくち」(濃口)
  • 「うすくち」(薄口)
  • 「たまり」(溜り)
  • 「さいしこみ」(再仕込み)
  • 「しろ」(白)

の5種類に分類されています。「」内がJASの正式な表記のようです。

 さて、福島県では見なかったですが、前述の通り、各県での見取り調査ですが、まず新潟県から。
 新潟県は実際には東北に入りませんが、巡った地域が新潟県北部ですので、かなり東北地方の影響が色濃く出ているという予想でしたが、予想に反して、やはり越前・越中・越後の流れから来る関西の薄口醤油文化の影響からか、比率的にも濃口と薄口、関東ほどの開きはありません。薄口醤油の割合が、その他の県(山形・秋田)に較べると大きかったようです。

 お次は山形県。ひと山、ふた山越えて鶴岡市ヤマザワですが、明らかに濃口醤油、そして『あまくち』や『うまくち』といった甘味料その他の原材料が添加された醤油の比率が増加。その後の調査でも頻繁に見掛けるようになった、『味どうらくの里』というのが目に付き始めました。これはキッコーヒメという亀甲の中に『姫』の字が書かれた『東北醤油』という秋田のメーカーです。
 その後調べましたら、この『味どうらくの里』という醤油は非常に人気商品だということ、『キッコー』というと『キッコーマン』が圧倒的に有名ですが、醤油では『キッコー』が使われているメーカーが結構あるということが判りました(『キッコー』に関してはまた別に述べたいと思います)。
 さて秋田です。秋田市に到着し、昼食をとった後、それまでの穏やかな晴れ空から一転、雨になり雨宿りがてら入ったスーパーのマルダイ土崎店さんにて。 『ヤマキウだし入りあま塩』と本醸造ヤマキウとは聞き慣れないブランドですが、日本酒をご存知の方には『大平山』の醸造元といった方がピンと来るかもしれません。そもそもの歴史を紐解くと味噌・醤油の醸造が古く日本酒の方が後から造り始めたそうです。
 ここでの醤油の陳列棚を見ていると、どうにも食指を動かされるラインナップでしたので、パートのおばさんを捕まえて写真を取らせてもらえないかと尋ねました。あちらこちらで『個人的に醤油の研究をしているのですが・・・』と言っても皆さん一様に、不審そうに見ます。やはり商売敵・ライバル店の偵察だと思うのが自然でしょう。
 そんな視線も省みずにどうしても撮りたくなったのは、この醤油のお陰なんです。
 『キッコーナン』という醤油です。『だしプラス』というネーミングで、上の『ヤマキウ』もそうですが、ポップでカラフルなラベルのデザイン。しかも女の子のスカートを引っ張るパンダって(絶句)。得てして、『本物志向』の醤油などは白いラベル(和紙の場合も)に商標名が筆書きされる日本酒のボトルのようなデザインがなされるのに対し、非常にカルチャーショックを受けるデザインですね。パートのおばさんが上司として引き連れてきた社員さんの許可を得て撮影。『通常はお断りしているんですが…』とチクリと刺されながらも、愛想よくこのデザインがなんとも心惹かれて、とかなんとかいうと秋田ではかなりポピュラーなものなので、と不思議がられました。その地域に住んでいる方々にとって極当たり前のことでも、他地域から来た人にすれば、驚くようなこともあるんですね。いやそれにしても、買ってみたかったけど、こうした調味醤油はワタクシは使わないので残念ながら買えませんでした。
 他に目に付いた醤油は『キッコーに寛』のワダカン醤油が揃っているのは、やはり青森のメーカーということで近いからでしょう。『キッコー』以外にはまた『フンドーキン』『フジジン』といった『フンドー』や冨士のマークが有名ですが(あくまでも醤油に興味のある人々にとって)、四角に『伊勢越』の初めて見掛ける醤油が目を引きました。また調味料入りの醤油だろうとラベルを見ると、意外なことに本醸造。よく見ると、『伊勢』ではなく『伊賀越』でした(恥)。これもなかなか格好良いマークでこれも要チェックですね。と、旅から帰って来てから近所のスーパーで何気なく見ていたら、なんとこの『伊賀越』普通に売られていたので思わずゲットしてしまいました(慢)。
 また秋田市の『日本壹』の醤油も何気なく聞くと、『シキシマ』という醤油だそうで、大メーカーから中小含めて一説には1,500社あると言われている醤油のメーカーはワタクシにとって非常に面白いのです。