越後湯沢でキャンプ、そして帰京

麻釜湯にて

 野沢温泉では温泉に入るという大きな目標があったのですが、その後の行程に関しては、もう携えていったツーリングマップルの範囲外ですので、大まかなルートしか考えていません。野沢温泉の温泉街は山の方にあるので、そこからずっと下り、国道に出ると十日町方面に向かいました。程好く快適に走れる道でスイスイとバイクを走らせます。十日町に入って直ぐに分岐の信号を右折し、今度は越後湯沢方面に向かいます。

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 走っている時は知りませんでしたが、右手には清津峡という渓谷があり紅葉の時期の名所だということをこちら出身の会社の先輩から教わりました。
 暫らく山道を走ると一時間程で国道17号線に出ることが出来ました。石打という聞いたことのある場所です。そこから少し南に下ると待望の越後湯沢の街です。どこへ行くという当てがある訳でもないので、とりあえずは駅に向かいました。越後湯沢駅の東口です。比較的大きなバスターミナルがあり、そこをグルリと囲むように商店・土産物屋、信用金庫などが並びますが、日曜日ということもあってかお休みのところもあり、チョッと寂しい雰囲気が漂うのは否定出来ません。拍子抜けしたまま、バイクを置いて駅に入るとエスカレーターで上がります。丁度跨線橋になっているので停車中の電車や新幹線が見えます。そのまま歩いていくと立ち食い蕎麦屋、切符売り場、改札口と出て来てその前の広いスペースに催し物のお店が軒を連ねています。地元の名産だけに留まらず新潟の名産品がズラリと並んでおりました。そこを越えて階段を幾つか昇ると今度は西口に出ました。こちらはタクシーメインのターミナルで東口よりもこじんまりとしています。しかしこちらはそのまま温泉街の入口という雰囲気があり旅情漂います。これぞ越後湯沢に来たという感じです。時刻は午後3時過ぎ、もうこの日の宿営地はこの湯沢と決めたので移動もないので気は楽になりました。これは翌日判ったことですが、この判断は正しかったようです。この先に進むと群馬へ突入しますが、国道主体で移動しているワタクシにとって、それはかなりの山道を走った後に辿り着くので、ここまで朝富山の入善町から長野県北部を横断した末に越後湯沢に来ているので、ここら辺が限度というものでしょう。
駅の中に戻って、ようやく目当てのものを発見しました。催し物会場の向こうに見えるのが、『CoCoLo湯沢』という土産物屋さんや飲食が出来るスペースも含めた複合スペース。ここの中に『ぽんしゅ館』という日本酒のミュージアムがあるのです。以前から話に聞いたり、TVで見たりしていたのですがようやく来ることが出来ました。
 まだバイクに乗らなくてはならないので、試飲も出来ません(涙)でしたが、このように自動販売機形式の機械で、新潟県内の酒蔵が一同に会し試飲が出来るのです(¥500)。小さめのお猪口ですが手にしたお客さんがどれにしようかと迷いながらウロウロしている様を見るのは目の毒です。早々と退散して次に行きましょう。一通り巡って、そろそろ宿営地を決めなくてはいけません。東口に戻ってバイクに乗り込むと国道17号線を目指して降りて行きます。目の前に『白瀧』の大きい看板と建物があります、おぉ、ここのお酒でしたか。『上善如水(じょうぜんみずのごとし)』で有名な酒蔵ですね。新潟のお酒だとは知っていましたが、ここ湯沢のお酒とは知りませんでした。一時期独特の香りにはまっていた頃がありました。
 結局国道17号線の向こうを流れる川の辺りを走り回っていると良さそうな場所が見付かりました。普通の、というよりもむしろ小さめ河川敷ですが芝もあり車が入って行ってテントが張られています。水さえ調達出来ればキャンプに問題なさそうなロケーションで気に入りました。ここに今日はテントを張ることにしましょう。日の高いうちにテントを設営してから近くのスーパーに食料の買い出しに出掛けます。
 テントの近くを流れる魚野川は鮎釣りをする釣り人がいるぐらいキレイな川ですが、あまり大きくはない川でテントの近くでは流木が漂着している形跡はなく、火熾しをするのに手頃な小枝や松ぼっくり等が見当たりませんので、持って来ているロウソクを転用してこのように火熾しにします。風が強いと難しいですが、この日は運良く風はなく穏やかな夕方でした。水を得るためにセブンイレブンで買ったビールを飲みながらのんびりと木炭に火が点くのを待ちます。幾つかの木炭に火が回ればそれ等を集めて暫らくすると完全に炭に着火します。
 前夜の富山の魚に較べると、いくら魚の豊富な新潟県とは言え山の奥にある湯沢町ですからスーパーの魚もやや見劣りするのは否めません。もちろん流通の発達でこのような場所でも魚は在りますが新鮮なものというとチョイとばかり値が張ります。


 ということで予算との兼ね合いで選んだ食材は豆腐、栃尾名産の特大の厚揚げ、関東ではあまりお目に掛からないけど日本海側では比較的ポピュラーなニギスという魚、鶏の胸肉といった焼き物に適した食材を中心に。豆腐はいつも購入しているものより若干高いとは言えいわゆるスーパーの豆腐ですから、そうは期待しないで冷奴にしてショウガと醤油を掛けてかつお節を乗せて食べたのですけれども、これが意外な美味しさでした。しっかり豆の味が残っていて、これは意外な発見でした。栃尾の揚げといい、新潟は豆を使った食材の宝庫なのかもしれません。合わせるのは富山で買って来た日本酒の『銀盤』がまだ半分程残っていたのでそれを。日本酒の宝庫に来てこういうのは珍しいケースですが、ここで無闇にお酒を買って荷物を増やしたくないものですからね。
 昼間の温かさから比べると夜は流石に高地でもありますので冷えて来ました。夜露があたりにビッシリ付いています。ラジオを聴きながら飲んでいるといつしかお酒もなくなり(結局二日で2Lの紙パックを開けてしまった計算)、歯を磨いてテントに潜り込みました。そこまでは記憶があるのですが、どうやらラジオをつけたまま寝入ってしまったようです。真夜中にその音で気がついて起きると、小用を足し夜空を見上げるともう満天の星とはこのことだと言わんばかりに星が夜空に散りばめられています。すぐ近くに高速道路があるし、東京ほどではないにしても街の明かりもあるので、もっと山奥に入れば更に綺麗に見えることでしょう。
 翌朝は、再び快晴モード全開です。向こうの山は綺麗に晴れ渡った青空に映えてとても綺麗です。実はテントを張った側は山を背にしているので向こうは晴れていて気持ちが良さそうなのですが、居る場所にはまだ日が当たっていないので目覚めの紅茶用のお湯を沸かしながら寒さに震えていたのです。この日は帰ることにしていたので晴れているというのは非常に嬉しいものです。いつもは旅行中に一度ならずとも雨に降られることが多いのですけれど、今回は一度も雨に当たりませんでした。出発前にレインウェアに撥水スプレーを掛けてきたばかりなんですけど、こんなものですね。 ゆっくり目の撤収は前日買った豆腐が良かったのでスーパーでもう一度買おうという計画のためです。そうは言ってもおそらく10時の開店でしょうからそこまでは間が持たないので、越後湯沢の町を散策することにしました。湯沢と言うぐらいですから温泉があるのですが、これからの帰り道も至るところに温泉があるのでそれほどここでは入ることにこだわっていません。足湯でも、と思ったらこれがあいにく掃除の時間で管理人のオジさんがお湯を抜いて掃除をされていました。何かのキッカケで話すようになったのですが、湯沢の温泉事情を聞かせてもらいました。昔は豊富な温泉だったそうですが、過去に起きた地震(近年ではない)、トンネル工事による影響で源泉からの湯量が激減し、温泉資源を守るために一括管理されるようになったこと、また源泉そのものの温度が下がったこと、法律の問題で源泉から数キロ以内から湧き出た温泉は使ってはいけないとのことで、飲料水としての地下水を汲もうとボーリングをしても、温泉が湧き出てきてしまうのでせっかく掘った孔も埋め戻さなくてはならない事など地元ならではの苦労話を聞かせてもらえて大変ためになりました。 1時間もすればお湯も溜まるからと管理人のオジさんに教えられて、暫らく辺りをブラブラすることにしました。朝ご飯は食べておいたのですけれど、新潟の地域性があるかと駅の中の立ち食い蕎麦屋さんで蕎麦を頂くことにしました。かけ蕎麦¥290。かけ蕎麦ですからシンプルなものですけれど、ネギとワカメのトッピング。特に特徴的なものはなかったようでした。それでも関東とは特に明確な違いがないようだということだけは判りました。昨日も見た『ぽんしゅ館』を訪れることにしました。相変わらずの混雑振りです。

 入口にはこのような酒瓶を飾ったスペースに等身大の酔っ払いの人形が立って壁に手を付いていたり、寝っ転がって居たりしていて記念撮影が出来るようになっています。 あらためてじっくり販売されているお酒を見て回ると、越の寒梅や〆張鶴といった有名どころの酒もビックリするような価格で売られています。JRの駅構内で売られているということでそのままお土産で購入したり、電車の中で飲んで帰ったりするのでしょうけど、いささかプレミアムを付け過ぎのような印象を持ちました。前回夏の旅行で村上のジャスコ内の酒屋で〆張鶴(月)の4合瓶は¥876だったのに、こちらでは¥1,900で売られているのですから。値段があってないようなものですね。併設されているインショップでは炊き立ての魚沼産コシヒカリ(湯沢は南魚沼郡湯沢町ですから本場なのです)で握ったおにぎりを食べさせるのですが、これも具によってですが一ヶ¥450とワタクシにはちょっと手の出ないお値段に驚いてお店を後にしました。
 そろそろお湯も溜まった頃だろうと足湯の場所まで戻るとまだ半分程しか溜まっていませんでしたが、早速入ってみると足首ぐらいまでは浸かることができました。しばしの休足ならぬ休息時間でサッパリするといよいよスーパーへ向かいます。到着する前に信号待ちで眺めると結構既に駐車中の車があるのです。不思議に思いながら入口を見ると、な、何と開店時刻は9時。エッ(゚Д゚≡゚Д゚)マジ
 買いたかった豆腐や栃尾の揚げを購入して荷物に積み込むと一路国道17号線で渋川を目指します。これがなかなかの山道で、長いトンネルとを越えてようやく猿ヶ京に辿り着きます。水上・沼田・渋川と下り渋川からは桐生方面を目指して群馬を横断します。
 桐生で国道50号線に出ると足利で給油を済ませて館林ICから高速に乗り渋滞らしい渋滞に巻き込まれることなく無事に東京に帰りつくことが出来ました。《完》