雨の赤羽にて

赤羽餃子センター

 カメラのことで小川町を訪れた後、さてどこへ行こうかと考えました。というのも神田小川町はその位置からしてどこへ行くのも便利ともいえるし、少し歩けば淡路町、神田、御茶ノ水、神保町と主要地下鉄の最寄り駅がゴロゴロしている場所なのです。

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 あまり歩いたことのない神田司町・錦町から神田橋方面も候補に挙がりましたが、手っ取り早くは慣れ親しんだ神保町へと足が自然に向いておりました。歩き始めて3分ほどで『三省堂』の大きな建物が出現。『すずらん通り』を歩きながらあまり馴染みのない通りも積極的に巡ってみます。昔入ったことのあるお店も無くなっていたり、建て直していたり。馴染みの『神田 伯剌西爾(ぶらじる)』のコーヒーも現在は¥500になっていて、時の流れに驚かされます。ワタクシが学生時代初めて訪れた時は確か¥300だった記憶があります。静かに流れるJazzの調べに落ち着いた店内の雰囲気、香り豊なコーヒーは心までも豊かにしてくれます。昼間から軽くアルコールを飲みたい気分でしたが、さりとて、ランチタイムが終わりかけの昼下がり、まだまだアルコールを提供してくれるようなお店が見付かりません。そりゃそうです、まだ仕込みの時間ですからね。
 ひと回りして考えていると、昼から飲める街として意識の奥底から湧き上がるように浮上してきたのが赤羽という街。何せあそこには朝九時から飲める『まるます家』さんがありますからね。
 ぶらぶら歩きながら水道橋に辿り着いたワタクシは、気がつくと(なんてのはオーバーですが)京浜東北線赤羽駅に降り立っていたのでした。秋葉原での乗換えを含めても30分も掛かりませんから意外に近いものです。水道橋で15:50に電車に乗り到着したのは16:15頃。まだ日が暮れる前なので昼酒と洒落込むことにしましょう。駅の北口を出て左に進むと1番街の入り口。産廃の積み込みのダンプがバックでキレイに入っていくのを眺めながら信号待ち。道なりに進むと『まるます家』さんが見えて参ります。雨降りに傘を刺しながらカメラを構えるのはなかなか辛いものがありますね。

 戸の外から中を覗くといつもながらの賑わい。混んでいるようですけれど、一人なら入れないことはなさそうなので、戸を横に引きました。お客さんのさんざめきが、喧騒というよりも心地良いBGMとなって感じられるのは、飲む気のボルテージが上がっている証拠でしょうか?オネーサンに一人と告げると手近なカウンターの席をあてがわれます。瓶ビールを注文して(いつも申し上げるようですが、さてこのお店の瓶ビールはどこの銘柄だったっけ?と瓶を見るまでドキドキなのです。ビール会社の事を聞いてから注文をしたりするようなウルサいお客は面倒臭がられます)、サッポロの赤星(ラガービール)大瓶を見てニッコリ^^v。
 豊富にあるお品書きの中からまずひと品を選び出すのは至難の業です。お通しがない分、早めに何かを見繕っておかないとせっかくこちらに来ても空酒になってしまいます。以前にも来たことがあるし何か別のお手軽なものをと、ねぎぬた¥400をチョイス。我ながらなかなか渋いつまみになりました。
 こちらのお店では、うなぎをはじめとする鯉やドジョウといった川魚料理、名物のメンチカツ等のフライものが人気で、いくつもオーダーが入っていました。
 ねぎぬたをつまみながら、渇いた喉を潤していると、この日は少々肌寒く感じられましたが、お店の雰囲気、お客さんの熱気で次第に温まってきました。
 赤羽には東京23区内唯一の酒蔵があり、そこのお酒を頂きたかったのですが、あいにく冷酒しか取り扱いが無かったので『金升』¥300というお酒を燗はせずに常温で頂きます。ぬたもなくなり、鯉の洗い¥400を追加。生まれて初めて食べましたが、アッサリと淡白な身ですけれども脂がほど良く乗り、臭みは全く無く美味しいものですね。それにしても、肌寒いはずの雨降りの秋の日なのになんでこんな鯉の洗いなどという肴でお酒を飲んでいるのか、ツッコミは無しの方向で。
 次のお店の予定もあり、にこけんメンバーの何人かにメールを送ると候補のお店が幾つも寄せられたのでここらで軽くお会計して移動しましょう。
 そのお店は、小学校の裏側の方にありました。ウェブ情報で偶然見つけたのですが、『赤羽餃子センター』というお店です。小さな間口の狭いお店で、ひっそりという感じで佇んでおりました。写真で見たよりも、実際に訪れるとまさにワタクシ好みの雰囲気がプンプン漂っています。ワタクシは最近多いような、いかにもレトロ感を漂わせるようなホーロー看板、ポスターを貼り付けたりブリキのおもちゃをさりげなく置いてあるような、新興の居酒屋さんやもつ焼き屋さん等には心惹かれないのです。あくまでも長い歴史が育んだお店の歴史が醸し出す雰囲気が好きなのです。そればかりは、いかにお金を掛けても作り出すことが出来ないものでしょう。

 雨降りでまだ早い時間ということもあって、客待ちでお店の奥にいた御主人と奥さん。またしても瓶ビール¥480(大)を頼んでその名にも掲げられている餃子を注文します。メニューは長らく張替えても書き換えてもいない様子で、元の色が判らないような凄い飴色になっています。驚かされるのはそのお値段。餃子¥270から始まり、ラーメン¥270、タンメン¥330、ワンタンメン¥330、もやしうまにソバ¥340、最高値のチャーシューメン¥500、謎のダールメン¥500、五目ソバ¥500、廣東メン(表記どおり)¥500、みそラーメン¥340、ヤキソバ¥340、カタヤキ¥430、野菜イタメ¥270、麻婆豆腐¥300、チャーハン¥400、中華丼¥400、天津丼¥580、ライス¥160、ビール¥480、お酒¥280、コーラ¥180。尚、大盛りは麺類各¥60増し、ご飯もの(チャーハンを含む)は¥80増し。それにしても一体いつの時代の標準的なお値段なのでしょうか!
 冷凍の、それでも自家製と思しき餃子を冷凍庫から6ヶ取り出し、テフロン製のフライパンに並べて強火で焼き始めます。寸胴のお湯を餃子の高さの9分通り入れて火を通した後、湯を捨てて更に焼くと綺麗な焦げ目が付きます。焦げ目を確認し(後から来たお客さんの分を見ていると、焼きが甘くどうするかと思っていたらキチンと妥協せずに焼き目が付くまで焼いていた)、フライ返しにキレイに並べて一気に裏返してこの仕上がり。この時は御主人が麺類、炒め物を担当し、奥さんは餃子を担当されていました。
 決して小さいとはいえない大きさの餃子は写真でお判りの通り、皮はパリッと焼けて香ばしく、中はジューシー。大変美味しゅうございました。
 この後、急遽錦糸町に戻り他の友人と合流することになったのでお暇することになったのですが、居心地の良いお店はまたきっと来ようと思わせるワタクシ好みのお店でした。