銀座経由、練馬行き

三原橋より和光を望む

 ようやく歌舞伎座を気の済むまで撮り終えると、もう秋の日も傾き掛ける午後三時。歌舞伎座の目の前にある岩手の物産を取り扱っている『いわて銀河プラザ』も気になるところ。一巡りして最近TVで良く見掛ける中村屋の海宝漬けが冷凍パックで¥1,500というのにグッと来ましたが、この後の予定もあるので念のため諦めておいて銀座に向かいました。出掛ける時には、バッグを持たないときには買い物をして置き忘れることを懸念して買い控えることが多いのです。三原橋から銀座の和光が見えます。そういえば銀座自体来るのも久し振りなんですよねぇ。

 ワタクシが学生時代にカラオケボックスが出来たのが話題になるぐらい、それまでは非常に別格の気品を持っていましたが、今となっては四丁目の和光の筋向いに『マツモトキヨシ』があったりして庶民の部分も目立つようになっていますね。銀座鹿の子、千疋屋あたりのお店は銀座らしいと言えばらしいのですが、こうしたお店(『マツモトキヨシ』がある並びに『Dior』の巨大なビルがあったりと何だかヒッチャカメッチャカな、とりとめのない街並みになってしまったような・・・。
 銀座も見始めるとキリがないので今回はそのまま晴海通りを数寄屋橋の交差点を渡り、マリオンをくぐり抜けて交通会館の下から有楽町線に乗って一路、練馬方面へ。今回築地を回っていて、元坊さんのことを思い出したのです。ワタクシの愛読書である『酒のほそ道』の中で出て来るエピソードに、頻出してくるんですね。そんな訳で、最近練馬方面も訪れていないこともあり行ってみることにしたのです。

大きな地図で見る 有楽町線の有楽町から乗った電車は、和光市行きでしたので、一旦池袋で待ち合わせをして次の西武池袋線清瀬行きの電車に乗りました。降りる駅は新桜台です。同じ桜台ですけれど、地図でお判りのように駅同士は少々離れていて、しかも途中で通行止めの工事をしていたりと、不案内の土地を訪れるのには骨を折りました。 それでも、歩きながら元坊さんのブログの記事の中にも出て来るお店が幾つも発見出来ました。ローズマリーもこんな感じなんだぁとか、桜台の駅の並びにラーメン二郎桜台駅前店も見つけました。こうして実際に訪れて歩き回ってみるとその土地を実感できますね。予告せずに訪れたので、あいにく遠くへ出掛けていた元坊さんには会えず仕舞いでしたが、ビックリさせようと思ってのことなので仕方がありません。お店に居たT光嬢にお土産を渡してお店の前の通りを西へ向かいます。
 少し歩くと予想よりも近いところで見掛けたことのあるお店だと思ったら、『田代』さんだと判り、桜台と練馬の近さを改めて実感。『ふじよし』さんへ通じる商店街だったのです。
 
 何度も通ったことのある道を抜けて、練馬の駅前、千川通りに辿り着きました。いつもはない、商店街のお店の名前が書かれた提灯が通り沿いに並んで灯っています。時期的にお酉様の時期ですからね。
 ひと通り見てみると、知っているお店の名前も幾つか見付かりました。上段中央やや左寄りに『金ちゃん』の提灯を二つ発見。しばらく行っていないので、そろそろ行きたいところですね。マスターの柔和な笑顔が印象に残っています。大きな企業では提灯は複数掲げているところもあり、セットで文字が揃うようになっています。お酉様というと錦糸町から近いところでは浅草の方が有名ですがもちろんあちらこちらであるようですね。


 日が暮れていく練馬の街を久し振りに歩いてみました。鳥ふじさんは何度も伺った焼き鳥の美味しいお店。値段がチィーとばかし高いのが難点ですけれども、当たり外れの少ないお店だと思います。まだ4時半でお店が開いていないので、他も回って見ましょう。練馬で飲んでいたのはほぼ10年前のことでしたから、お店の半分は閉まっていたり、入れ替わっていたり。飲食店の入れ替わりの早さは商店のそれとは比べ物にならないほどですね。以前何度も足を運んだお店も今は昔。何度探してもここだった筈だけど、としか判らないですが、中国系の怪しいお店になっていました。
 こんな嬉しい発見もありました。『千曲食堂』という昔ながらの大衆食堂。こうした古典的な大衆食堂が残っているのは堪らなく嬉しくなってしまいます。千川通りの裏手で、気の早い年配のお客さんが某かをつまみに瓶ビールを空けています。千曲というぐらいですから、きっと御主人が長野県のご出身ではないかなと想像するのも難くありません。いつまでもこうしたお店が続いてもらいたいものです。

 再び少し神社の方に戻って。年配の奥さんが買い物のカートを引きながら、神社の前におもむろに立つとカートを一旦置いて、手を合わせている姿にカメラを構えることなく思わず見とれてしまいました。あまりに自然なその姿は素晴らしいのひと言。

 殊勝な思いにもかかわらず、心はすっかり飲みたいモードに突入。5時になるまでの待ち遠しいこと。四文屋さんには16:45頃から見ていたのですけれど、準備に余念無く辺りをブラリブラリとして待っていても5時前には開くことはなさそう。5分過ぎにお店に入ったら、もう既にサラリーマン二人連れ、一人客が3人ほど。皆さん早いご出勤ですね。こちらも負けじと、瓶ビールを手酌で。これが飲みたかったんだと、声にならないため息と共に飲み干します。

 まずは好物のレバ刺しがあることを確認して2本注文。こちらのお店では焼くネタのレバーをそのまま焼かずに『刺し』として出してくれます。焼き物のネタの鮮度が良い証拠ですね。酸味のあるタレを掛けて出されます。タップリのネギがうれしいところ。若手中心の店員さんはキビキビした動きも小気味が良いです。こうしたお店では今時では、注文が入ると店員同士が連呼して『〜御注文頂きました〜』『ありがとうございま〜す』と掛け声というのか、コールというのか喧しいお店が多いように思うのですけれども、こちらではそうした、ワタクシにとってヘンな習慣というのがなくて実に良いのです。 日替わりのおススメの焼き物をすぐ傍で書いていた店員さんに聞いて注文しました。素っ気ない対応ですが、要点を抑えた説明で判りやすかったです。しきん(食道の付け根部分)とはらみスジ。しきんというのは初めてでしたがコリコリとした食感で、はらみスジは説明どおりはらみを掃除して出る部分だそうですけれども脂が乗っていました。どちらの部位も初めてで楽しむことが出来ました。
 他にはチレ(脾臓)とアゴといった焼き物もつまんで、お酒も一杯常温で頂き一時間ほどの滞在を楽しみました。四文屋さんはワタクシ好みのお店で、他には新井薬師の本店しかしりませんが、他も試してみたいですね。

 とお店を出て四文屋さんの外観を撮っていると、後ろは先程飲み屋街歩きをしていて気になっていた『俺んち』というお店。先程の四文屋さんでは残念なことにホッピーがなかったので今度はこちらでホッピーにしましょう。セットで¥350(外¥250中¥100)とは安いですね。二階へ上がってみると予想よりも広いお店で、まだお客の姿もまばらでした。メニューを眺めて、その値段に驚きつつも手堅く〆サンマ¥300をつまみにします。少々固い締め加減でしたが、先程のもつ焼きの焦げ味をリセットするには我ながらなかなか良い選択でした。二杯目となる中(焼酎)を追加して、煮込みも注文しました。 
 塩味のような味わいの煮込みSサイズ¥250(M:通常サイズ¥420もあり)。一種独特の味でこれはこれで気に入りました。まだまだ奥の深さを感じさせるお店ですが、風邪気味ということもあり今回は早めの帰還。大江戸線で40分ほどの距離とはいえいつものようにひと駅先まで乗り過ごす羽目になったのはご愛嬌と言うことで^^;)