ケミストリーがある?

 少し前のことですが、『食通たちがガチンコ勝負!芸能人!最強グルメ王決定戦!II』という番組が放映されました。『?』と付くぐらいですから、もちろん『食通たちがガチンコ勝負! 芸能人 最強グルメ王決定戦!』という番組が以前放映されたのでした。その模様は数日前に再放送されましたが出演者は江守徹杉本彩品川祐ギャル曽根武田修宏という5名。
それぞれ食べることに一家言を持つような人達ばかりを揃えたようですが、番組の趣旨や内容は面白いとは思ったもののトータルでの番組の雰囲気としてはあまりヨロシイとはいえない感じを抱きました。というのも各テーマ(「ご飯3杯食べられるこの逸品」「本当は教えたくなかったこの逸品」「格安だけど激ウマなこの逸品」「死ぬ前にもう一度食べたいこの逸品」)に沿って各出演者がおススメの逸品をプレゼンするのですけれども、その内のE守T氏(伏字になっていないか)がことごとく否定的なコメントを残すのです。自分が一番グルメであるということを主張する番組ですから当然ですが、他の出演者の出すものを試食して全て否定という態度には他の出演者も苦笑い。そういうスタンスのスパイスとして演出がなされていたのかもしれませんが、こういうのはどうにも頂けないと思いました。
 しかしながら、続編である『食通たちがガチンコ勝負!芸能人!最強グルメ王決定戦!II』が製作されたぐらいですからある程度の成功を収めたのでしょう。今回の出演者は徳光和夫小林幸子梅沢富美男梅宮アンナ東貴博という布陣。今回も直前の再放送の段階から興味を持って見ていましたが見比べて今回は非常に良い雰囲気の中、番組が進行されていました。前回の反省があったのか、出演者の人選からして比較的柔らかいキャラクターが集まったんではないかと思いました。

 最大の特徴は今回の出演者はお互いのプレゼンした食べ物に対し決して否定的なことを述べず、美味しいものは美味しいと絶賛していたこと。これが各テーマ(今回のテーマは「今、絶対食べるべき冬の究極料理」「安くてウマい最強庶民派グルメ」 「人生で最も美味しかった最高の逸品」の3点)でそのシーンが何度も見られました。グルメの常で、一方がここのお店のこれ、というものを持ち上げると、ああ、それねと自分でも知っているという態度をとることが多いのですが、そうした嫌味な態度は微塵もなく非常に好感の持てる『大人な態度』で番組に臨んでいるのが良い雰囲気を醸し出していたのだと思います。
 もちろん、各出演者のキャラクターが生かされていたこともあるでしょう(梅宮アンナ嬢は少々大人し目だったかも他の徳光・小林・梅沢氏の強烈なキャラクターに押されてかなり食いついていかねばならなかった印象も)。世代間でのハンバーグに対する温度差というのは興味深いものがありましたし、そのやり取りでは笑わせてもらいましたけど、頷けるものでした。ということで今回はかなり楽しめた内容でした。
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 高校生の頃から読んでいる(殆んどが立ち読みで恐縮ですが)HM/HR(Heavy Metal & Hard Rockの略)の専門音楽雑誌『Burrn!』という月刊誌があります。以前ほど熱心には読まないのですけれども、ウェブで音楽の情報がこれほど手軽に入るようになる前の時代では、HM/HRというマニアックなジャンルの情報を手に入れるにはこういった雑誌媒体(他には『Young Guitar』『Guitar Magazine』『Player』ぐらいしかなかったように思います。『Young Guitar』はHM/HRのミュージシャンが多いもののギタリストの記事のみ、『Guitar Magazine』や『Player』はHM/HRというよりもRock寄りの内容という印象)しかなかったのです。
 その内容はコンサート・ライブのレポート・感想記事やミュージシャンのインタビュー、新譜・再発アルバムのレビューが中心ですけれどもメンバー間でのインタビュー記事の中で、しばしば独特な表現がありました。
 例えば新しいバンドのメンバーが集まったそのきっかけや、新メンバーが加入する経緯、もしくは以前活動していたバンドが復活して再結成した時のインタビューなどで、『あいつとの間にはケミカルがある』とか『ジャムっている内にケミストリーを感じたんだ』などという表現です。
 ケミカル(chemical:化学の、化学的)もケミストリー(chemistry:化学、化学的性質、化学現象)もその成り立ちは一緒のようでalchemy:錬金術から派生した言葉のようです。その当時そうした記事を読んで前後の文章から推測して『良い化学反応→良い関係』と判断して読み替えてましたが、あながち間違っていなかったようです。
例文で言うと
"We have good chemistry."だとか
"We have the same chemistry."の感じです。
 これをその当時の記事を編纂した(訳した)編集者が直訳してしまったので日本語にしたらヘンな印象を抱いてしまったのですけれども、もう一つchemistryには相性という意味もあります。ということで、和訳すると『相性が良い、良い間柄だ→ウマが合う(この言い方も現在ではいささか古めかしい言い方ではありますが)、気が合う』の意味だったんですね。
 また『俺達にはヴァイブ(vibe)がある』という言い方も良く使われていましたが、vibe(=Vibrationの略)も同じように雰囲気というニュアンスで使われて、『波長が合う』という意味になるようです。
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 ということで、何が言いたいかというと皆さんもうお判りですね。初回の番組では続編を作るような成功を収めたにもかかわらず一回目の番組の中では出演者の間に、そしてワタクシにはその化学反応が起こらなかったのです。一人の出演者の為に不活性に陥っていたのが、今回の続編でようやく溜飲を下げたのでした。