『めぐりん』に乗ってナイトクルージング

浅草♪

 土曜日、夕刻。普段なら暇な時であれば昼からでもPCの前でチビチビと飲っていたりするのが、この日はそんなこともなく夕方になってからどこかへ出掛けたくなりました。

東京角打ち―立ち呑み百景 (SAKURA・MOOK 9)

東京角打ち―立ち呑み百景 (SAKURA・MOOK 9)

 

 最近買った本で取り上げられていた角打ちのお店がありましたのを思い出して行ってみることにしました。行先は浅草の吾妻橋のたもと、三ツ目通りを真っ直ぐ北上し浅草通りを左に。アサヒビールの本社前で何枚か例のオブジェを含んだ写真を撮りながら吾妻橋東詰めに辿り着きました。

 思ったほど人通りもなくカメラを構えて立っていても通行の邪魔になる気遣いもなく、橋を渡り切るとすぐの小道に入ったところにある『四方酒店』が目指すお店でしたが、どうも慌ただしいお店の人の動きも眺めるとなく見ているとどうやら閉店のよう。タイミング悪っ!ヤダヽ(o`皿′o)ノ

 と、まぁ本来の目的を果たせないのはいつものことなのでそれほど落胆もしないのですけれど、次善の策で考えていたすぐ近くの裏通りに見掛けていた立ち飲み屋さんに行って見るとここは予想外に満杯でしかもオヤジ比率100%、無理して詰めてもらう理由もないので、立ち飲みは諦めて手堅く南千住方面に行くことに即座に方針転換。東武浅草駅のすぐ脇から出ている『めぐりん』という浅草界隈を循環しているバス(¥100均一料金)に乗って出発。北方面に行く『北めぐりん』というのに乗ります。

 知らないバスに乗るというのは、どこをどう進むのか判らないので、自分で歩き回るのとはまた違った面白さがあります。通常の都営バスの車体とはふた回りほど小型のバスですから思い掛けない小道も入って行きます。乗ったバスは『清川一丁目止まりです』と運転手さんから声を掛けられていて、その瞬間はどこなのかサッパリ判らずに頷いただけでしたが、どうやら聞き直すと目的地の一つ手前の停留所らしいので、街歩きの好きなワタクシには願ったり適ったり。それよりも自分で歩いていたなら見つけられなさそうなお店もいくつか見つけて、予想外の収穫を得られました。

 バスは唐突な場所で終点となり、そのまますぐ近くの中通りに入って行ってしまいました。バスでやって来た進行方向にそのまま歩き続けて、吉野通りを渡るとポッカリ浮かぶ頼もしい灯り。お馴染みの『丸千葉』さんです。昼の二時から営業していて、ここのところ昼間に来ていることが続いていたので、夜の部は久し振り。

 中は相変わらずの繁盛振りですが意外にも何個かカウンターに席が空いております。お店の若主人(通称やっちゃん)が入り口付近で(寒い場所で)申し訳ないとの旨を詫びますが、こちらはそんなことには頓着しません。それよりたまにしか行けないのに憶えていてもらえて、新年の挨拶までしてもらってこちらが恐縮します。
 ホッピー白を注文して辺りに張り巡らされた夥しい数の品書きを眺め回します。こうした品書きの多いお店、大好きなんですねぇワタクシ。長々とメニューを検討していつもの刺身盛り合せをやめて、貝づくし¥800をチョイス。この日はつぶ貝、赤貝、ホタテの三種盛り。肝やヒモまでついていて一人でつまむには充分すぎるボリューム。ワタクシの皿の内容を見てお隣のご夫婦も注文なさっていました。

 それにしても、こうただ一人で飲んでいても自然と笑みがこぼれる(決して怪しい人ではありません)お店というのは貴重です。混雑はしていてしっとり落ち着けるお店というのとは違いますけれど、若主人の細かな気配りと目配り、打てば響くとはこのことでしょう。さりげなく冗談も交えてくれたりするのは嬉しくもあります。なまこ酢を頼めばやはり燗酒が欲しくなります。ホッピーを飲み干してお酒を注文すると大関の大徳利でやって来ました。普段純米にこだわっているワタクシですがこういうお店でそんなことを持ち出すのは野暮ってものでしょう。大関の他、菊正宗、剣菱といった古来のブランドが揃っていて、こうしたナショナルブランドが何種類もあるのは珍しい方でしょう。普通は大関なら大関、菊正宗なら菊正宗とどれか一本にすることが多いですから。
 お酒で調子付いたので、もう少し何かつまみたくなり前回気に入った鮭のハラス焼きを追加。お酒も菊正宗に切り替えもう気分は上々。脂の乗ったハラスは外側はカリッと香ばしくて、中から汁が溢れてきます。結局この日はこれだけ頂いてすっかり満足して¥3,000。いつもより一杯余計に飲んでしまいましたがこの満足感は久々です。熱く火照った頬を冷ますように外に出るワタクシの後姿を追い掛けるように『ありがとうございます』の声。
 近場のタカラ酒場、大林とここら辺には心惹かれるお店が吉野通り沿いに並びますが、今の気分にフィットするお店が見付からず*1さきほど『めぐりん』で通り掛かりに見つけたお店へ行ってみることにしました。アサヒ商店街をブラリブラリと酔いを醒ますように東に向かいます。

 少し裏手に入ったところにあるその名も『橋場』という大衆居酒屋。今この記事を書くのに調べたらあまりヒットしないようなので隠れた、地元に愛されるお店なのかもしれません。間口から予想するよりも奥はなかなかに広いようで、ワタクシは先客を避けるようにカウンターの端の方に席を構えましたが、奥にも座敷があります。お酒は、ホッピーありますか?との問い掛けにないとのことでしたので、焼酎をお湯割で頂くことにします。というのも球磨焼酎と書かれているので面白いと思ったのです。ここら辺はもう既に酔っ払っている証拠でしょう。
 お湯の入ったグラスと徳利一本に入った芋焼酎、こんなスタイルは初めてでした。




 お通し2種類。里芋とイカの煮付け、そしてフライはじゃが芋に衣を着けて揚げたもの。お通しが一つではなく複数来るというのは個人的にポイントが高いです。もちろん出来合いのお通しですと逆に手も付けないことも多いのですけれど、こうした手作りの味わいは嬉しいものです。これだけでもこちらのお店の姿勢が垣間見えて期待が弥が上にも高まります。馴染みの鳥義さんのお通し3種盛りはいつも何が出てくるか(貝の丸煮はいつも一緒)楽しみの一つでもあります。

 

 ワタクシの好物の一つである揚げ出し豆腐。これがメニューにあるとニッコリ、注文してしまいます。豆腐だけではなく大ぶりのしめじも揚げて添えられており、少し変わった味付けの出汁に浸かっておりました。これはこれでアリの味です。『出没!アド街ック天国』を眺めながら、いつしか隣のお客さんも帰り、ワタクシと残すところあと一人になりお会計してもらいました。ここもまた今度じっくり攻めてみたいです。外に出るともう既に看板の灯りは落とされお客さんの引き際もきれいなもの。また来ようと心に誓い浅草方面に歩き始めます。

 言問橋の辺りでスカイツリーをパチリ。この橋を越えると一気に自宅まで近付く気がしますので不思議なものです。行きは『めぐりん』で良い良い、帰りは酔い酔いナイトクルージングとなりました。

*1:大林さんは既に閉店時間