浅草☆昼歩き

酒の大枡

 前夜に歩いていった浅草の街なのですけれども、明けて日曜日の朝、前夜のアルコールが残っている訳でもなく天気も良いので再びカメラを携えて家を出たのでした。今回はお手軽なサブ機ではなく、メインのE520を入れたカメラバッグを肩から掛けて行きます。でもこのスタイルだと自分がオノボリさんのように見えはしまいかといつも不安な思いに駆られるのですけれども?

 そんなこんなで再びやって来ました吾妻橋。ここら辺ではデジカメを携えた『にわかカメラマン』が皆一様にワタクシの来た方向を撮影しています。アサヒビールの例のビルを撮っているのかと思いながら、振り返るとそれだけではなく、今建設中のスカイツリーがニョッキリと姿を現しているのでした。なるほどね。

 前夜オバチャン達の集団に阻まれ撮影できなかった地下道の入口。流石に昼間だと陽光もタップリで撮影に苦労することもなく一件落着。地下道を立ち昇ってくるソースの匂いは焼きそば屋さんからのものでしょう。
 階段を下りていくと、まずは立ち食いの蕎麦屋さんがあります。

 そこから左に折れていくと床屋、ラーメン屋、何某かのディスカウントショップが立ち並び、一種異次元に迷い込んだかのような錯覚に捉われます。確か日本で最初の地下鉄は、ここ浅草と上野間で開業されたということらしいので、時代を感じさせるた佇まいは本物なのですね。それにしても床屋さんの¥700というのはモノクロに加工すればこれを撮ったのがウン十年前と言っても信憑性を感じさせるかもしれませんね。
 新宿のサブナード、東京駅八重洲の地下街、そして生まれ育った札幌の地下街に較べるとその規模はとても小さいのですけれど、むしろこれぐらいの感じが味わいがあって好きです。

 今度は逆方向に向いて、立ち昇るソース焼きそばの香りを辺りにふり撒いている『福ちゃん』と地下鉄銀座線の改札方面。この『福ちゃん』の感じも実にそそられる佇まいなのですけれど、あいにくワタクシはこのソースが苦手で一度も入ったことがありません。きっと楽しく飲めるお店なんだろうなぁといつも想像しながら素通りしてしまうのです。ディスカウントショップで目当てのものを探し当て、予想外に安く買えて満足したワタクシは、一旦地上に上がり、松屋前の信号を新仲見世方面に渡ります。

 先程の地下街からも新仲見世方面に出られる出入り口がありましたが、地上から来たワタクシはココに出るのかと思いつつ場所を確認し進むと直ぐにワタクシ好みのいい風情の食堂を発見しました。『サワダ』さんというらしいです。『食堂 サワダ』と大書きされているこの潔い看板になんともくすぐられます。コーラー(お店の表記通り)、ジュース、サイダー各¥150、ビール中瓶¥450から始まり、若布ラーメン¥500、ワンタンメン、タンメン各¥600、五目そば¥750、カツ丼、親子丼各¥780、等などその佇まいほど値段はノスタルジーを感じさせるものではなく現代的なものです。


 店内を覗いてみると、店員さんもお客さんも年季が入っています。こうしたお店が好きなお客さんというのはやは趣向が似通っているのでしょうね。ということは、ワタクシもこういうお店に惹かれるのですからワタクシ自身…(笑)。これ以上申し上げるのは辞めておきましょう、それでなくても年齢詐称疑惑を抱かれることもあるぐらいなのですから。食品サンプルに埃がかぶっていたら、ただの寂れたお店になるのですけれど、そうはならないのは皆に愛され、新仲見世で今も元気に営業している証なのです。
 実は今回またしても浅草を訪れた訳というのは、

東京角打ち―立ち呑み百景 (SAKURA・MOOK 9)

東京角打ち―立ち呑み百景 (SAKURA・MOOK 9)

というこちらの本に載っていたお酒屋さんが直営している立ち飲み屋さんを探すこと。前日も探してみたのですけれどうろ覚えの情報では見つかるはずもなく、今回はキチンと調べて来ました。

 こちらがその『酒の大枡』というお店です。それまで探していたのがまるで見当違いの辺りだったのですね(恥)。辿り着いてみると裏通りですがモダンなコンクリート造りのお酒屋さんです。酒屋さん直営の立ち飲みといえば『角打ち』というのが昔からの大定番ですけれどそんな感じにはとても見えません。自動ドアが開いて店内に吸い込まれました(←大袈裟)。店内入って右側・正面は普通のお酒屋さん。とは言ってもかなりの日本酒の数々。焼酎も負けじと揃っているようです(焼酎はあまり興味がないのでノーチェックです)。知っているお酒もそうではないお酒も半々ぐらいでしょうか。ひと回りしてお店の左側にある、念願の立ち飲みスペースへ。レジを挟んでレストランかバーのような内装で、キッチンに二人ほど、ホールにも男性店員が居て一人だと告げると奥の、更に奥の窓際のカウンター席に案内されました。
 裏路地に面していてマンウォッチングには最適です。メニューを眺めると、キラ星の如くズラリと並んだ銘酒の数々から選んだ静岡・富士宮の『高砂』というお酒。これは今まで飲んだことがあったか記憶が定かではありません。先程のホール担当の男性店員さんに撮影の許可を得ると、快くOKしてくれました(嬉)。

 メニューの一部。全国各地の酒蔵から集められています。しかし、ここで注意が必要なのは二つの値段が書かれていて、それぞれ90ml、180mlの値段となっています。最初にメニューを見て思ったのは、意外と安くはないなぁと言うこと。酒屋さん直営ということで予想してきたので、もう少し庶民的な値段かと思っていたのですけれど、日本酒のお店のお値段並みに感じました。ハーフサイズで試飲感覚というところなのでしょうか?ワタクシは90mlでは満足できそうにないのでターゲットを絞って180mlでお手頃価格の『高砂』¥400に決定したという訳です。お通しがあるわけでもないのでお会計もそのまま¥400。豊富な日本酒を軽く楽しむのには宜しいようです。あくまでも立ち飲み店感覚としてはですけれども。座席もあるし、立ち飲み・角打ちというよりは立派な飲み屋さんですね。

 外に出ると、もう一軒当たりをつけて来たお店に移動します。東部浅草駅の北側にある串揚げ屋の『光家』さんです。前日、この隣りの『香とり』さんの看板が記憶に残っていたので、浅草の立ち飲み屋さんを紹介したページを見ていたら、ピンと来ました。前夜は気がつかなかった立ち飲み屋さんです。
 ガラリと木製の引き戸を開けると、時間がズレているせいなのか、店内はガランとしていて寂しい限り。ヤッちゃったかな?と思いつつも揚げ物屋さんにも拘らずキレイな店内に期待が膨らみます。客待ちをして手持ち無沙汰にしていたのか、若主人とおカミさんは俄かに活気付いてこちらの注文を静かに待ちます。

 お得なセットメニューから、ワタクシの苦手な練り物・ソーセージ・ハム類を除くと必然的にAセットになりました。これはドリンク(チュウハイ・サワー類)に、野菜の串揚げ4種類がついたもの。緑茶ハイを頼んで串の揚がりを待ちます。
 茄子、椎茸とまずはやって来ました。ワタクシは前述した通りソースが苦手なので、『ソース二度付け禁止』のルールは端から関係なし、で辛子に醤油で食べます。油も古くなっていないようで香ばしく、これは旨いですね。セットではない単品メニューの場合は¥120ぐらいから¥160が中心価格でしょうか、一本の値段が掛かれていますが、二本ずつの提供となるようなので要注意です。それほど食べられるわけでもないので控えておきます。ついで、玉ねぎ、アスパラとこれもカラリと揚がり大変美味。緑茶ハイで流し込むとお会計の¥1,000を支払い、外に出ます。まだまだぶらり歩きは始まったばかりです、伝法院通りに向かって歩き始めました。