昭和の香りに幻惑される国道駅にて

国道駅の表示

 今回の鶴見散策の目的の一つにはサンマーメンを食べることでしたが、もう一つには国道駅という鶴見線の駅を訪れるということでした。何となくブラブラしているだけではなくまぁ少しはこうした目的をプランに組み込んでいたりするのです。
 ベルロード、そしてまたその先の商店街を歩いていて、そろそろお店も途切れがちになり、そろそろその目的地である国道駅方面に向かおうと頭の中の地図の記憶を辿ります。

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 何となく今来た方に戻り方向だと思いつつ、鶴見駅方面に足を向けて国道15号線、いわゆる第一京浜に出ました。なんとなくの記憶なので大体こういう間違いはしょっちゅう起します。歩き始めてしばらく行き、先程練り歩いた鶴見三業地会の辺りまで戻ってきたのですけれど、どうも国道駅の表示が見つかりません。ふと振り返って見ると、第一京浜の遥か先に鉄道の線路らしき高架が掛かっています。思いっきり真反対に来てしまいました(泣)。ここで諦めては何の為に来たのか判らないし、気を取り直し今まで歩いて来た道を戻ります。
 鶴見の駅から鶴見三業地会、ベルロードを南に下って、第一京浜を往復するということで、かなり鶴見の街を堪能させてもらいました(苦)。それにしても人影の少ない道路でお陰様で歩きやすかったですね。この辺りではあまり道沿いにはお店も少なかったので写すべきものもなし。

 しばらく歩いてようやく国道駅に到着しました。先程折り返してきたところからは、600mほどですから不動産屋さん的なスケールで行くと80mが一分ですから約7・8分といったところでしょう。実際写真のExif情報を見てみると、7分ほどでここまで来ています。
 国道駅というのは1930(昭和5)年の10月に開業し、『鶴見線と京浜国道との交点にあることから命名された』とのことです。そして今なお残る現在の駅構内は建設当初から、全く改築されていない、とのことです。うーん、素晴しいですね。

 うわっ、ウェブで見たまんまの光景だとひとり秘かに内なる興奮を抑えつつカメラのレンズを向けます。惜しむらくは、この鮮やかな自動販売機の存在。原色も鮮やかにアピールし過ぎです(笑)。これがもっと控えめならそのまんま映画のセットですと言っても通用しそうな風景です。高い天井はアーチ型の梁で支えられていて、それが向こうの方まで連なっています。









 右側の方にはこれまた味わいのある『とみや』というお店の看板があります。お店の入口を塞ぐように自動販売機が設置されているので、残念ながら現在は営業されていないようです。かなり看板の汚れも溜まっている*1ので、閉店されてからの年月が窺われます。いやそれにしても実に渋い雰囲気ですね。












 少し進んで券売機と料金の案内板が左手に出て来ました。この国道駅無人駅なのでこうした乗車券を買っても買わなくてもどちらでも?という不届き者がいるかも知れませんが、そこはチャンと防犯カメラが付いているので、悪いことは出来ませんよ。錦糸町から鶴見までは¥450でしたが、お隣りのここ国道駅も同じ¥450で来られました。







 その改札はこれまた実に味わいのある木製の手すりと枠に囲まれたもの。キップを入れる箱や『乗車駅証明書発行機』と書かれたオレンジ色の機械、そしてここだけ近代的なスイカのタッチパネルがあります。そういえば昔こんな改札だったっけなぁと感慨深いものがあります。ここだけは自動改札にして欲しくないですね、雰囲気ぶち壊しですから。多分一日の乗降者数がWikipediaによれば

2007年度の1日平均乗車人員は1,532人

ということなので、自動改札機の設置費用が賄えるとは思えませんが。



 改札を過ぎて(改札を出てという視点からすると左)すぐ、『国道下』という焼き鳥屋さん。これまた良い感じの佇まいですね。ここはまだキチンと現役で営業しているようです。いつか営業時間に来てみたいものです。っていうか店先で焼き物をしていたら、構内が煙たくなりそうだから、やはり奥の方で焼くのでしょうか?立地的にいうと駅徒歩0分どころか、改札出て数秒というところです(驚)。











 さてさて、国道駅はドラマや映画の撮影に度々使われているということなのですが、ワタクシ、リアルタイムに見ていた明石家さんま大竹しのぶが主演の『男女七人秋物語』

男女7人秋物語 DVD-BOX

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に出て来る岩崎宏美が演じていた『美樹』が『荒三丸』という釣り船を経営しているという設定でしたが、まさか屋号も変えずにそのまんま存在するというのは驚きでした。結構一文字変えたりして、というのは多いのですけれどもねぇ。目の当たりにした光景にビックリしました。

 通路を抜けて振り返ってパチリ。この無粋なカラーコーンがなければもっと良い雰囲気なのでしょうけれど、どうも内部の老朽化している部分に近付かないように、という警告と注意喚起という意味では仕方のないことなのでしょう。

 抜けた向こう側には、チョッとした商店街、までは行かないもののいくつかお店が並び天ぷらを売りにしたお店が散見されました。特にすぐそばの天金というお店はかなり店構えも近代的で、この界隈にしてはあまり雰囲気がマッチしているとはいえない、そんな感想を持ちました。昭和の風景にいきなり平成が飛び込んできたような感じなのです。とは言え、美味しい天ぷらを食べさせてくれそうな期待感はあるのです。そのお店の前から線路を撮ってみることにします。高架自体は割りと最近塗り直されているので*2、そこら辺は煤けた感じはしません。

 再び通路を戻って、第一京浜の方まで出る手前にはこんな不動産屋さん。三宝住宅社さんと言うようですけれど、実際には営業されているかは不明。

 その高架の向こう側の橋脚を挟むように建物があるのですけれど、そのコンクリートの壁には緑色のネットが張られていて、幾つかの穴が穿たれています。これもウェブ上で知った情報ですけれど、

第2次世界大戦中の米軍による空襲においての機銃掃射の銃弾の痕である。

 とのことで、これも是非見てみたいと思っていたものです。なるほどそう言われてみれば、コンクリートが老朽化して崩れてきているのではない様子です。こうして、ウェブ上で知った情報に基づいて来て見ましたが、なるほどこれは一種の異次元空間ですね。すっかり満足して次なる目的地へ向かうのでした。

*1:すぐ近くに第一京浜があるので空気はかなり汚染されていると思われます

*2:いつ再塗装されたかの要目が克明に記載されていた