久し振りの大森〜本編〜

大衆酒場:富士川@大森

 池上通りを歩き始めたワタクシは、かつて豆大福を買ったお店や、記憶に残る蕎麦屋さんの姿を追い求めます。しかし、土曜日ということもあってか、シャッターが閉まっているお店も数多く見つけることが出来なかったり、無くなっていたりと時の無慈悲な経過に心を痛めることもしばしば。それにしても、歩いて来たのは学生時代以来ですから10数年ぶり、基本的な大変革というものはないもののチョコチョコお店が変わっていたりして。大変革といえばワタクシがかつてアルバイトしていたイトーヨーカ堂の大森店が駅の西口の賃貸店舗から東口の方に少し歩いたところに新たに店舗を構えたということ。賃貸契約の関係で更新せずに、大井町店と蒲田店に挟まれ売り上げも振るわなかった大森店はなくなるという話だったのですけれどもね。

 さてそんな池上通りにあり最初に目に付くのは、やはり極彩色のKマークでお馴染みのカドヤさん(正式にはカドヤ食品というそうです)。不動産屋さんが経営母体のようですけれど、こちらはスーパー。一階にはお酒もあり、二階は輸入菓子やこだわりの食材が揃うという余所とは少し毛色の違う独自の路線のお店です。

 そんなカドヤさんの手前には葡萄屋さんというお店があります。前回の記事のトップに掲げておいた写真はこちらのお店の彫像です。馬にしてはたてがみがないし、顔つきからするとラクダのようにも見えます。昔からあるのですけれど、何屋さんなのかはいつも不思議に思いつつお店の前を通り過ぎていました。今回はしっかりとお店の前のメニューを拝見してみましたヨ^^v。

 鍋、焼きとり、油を使ったもの、おでん、合へもの(全てお店の表記通り)と色々取り揃えてありますが、基本的にワタクシの範疇外ですかね@価格的に。とてもふらりと入って、という雰囲気ではないので遠慮しておきましょう。しかし、昔から営業されていて今でも続いているのですからそれなりにお客さんが付いているのだと思われます。結構量が多いのか、厳選された食材でも使っているのでしょう。
 再び歩き始めて、カドヤさんの前を通り過ぎるとその向こうに見えてくるのが大森界隈では知らない人は居ないというぐらいの、ダイシン百貨店です。何だか今回は設定が失敗してボワボワと映ってしまいました。手前のところにももう一軒あったような記憶があるのですけれど、今ひとつハッキリしません。何やら工事が始まっていて、ダイシンの中に入ってみましたが、やはりリニューアルというか建て直しの計画が始まっているようです。公式HPによると既存の店舗を平行して営業しながら、隣りで工事を進めるという二段階方式でのリニューアルになるようです。欲しいものを見つけられずに買い物は終了。実際欲しいものは重かったりかさばったりして買いたくても買えなかったのですけれどもね。久し振りに訪れた売り場は若干品揃えも変更されていました。昔のワサワサした感じがなくなったのは少々残念ですがこれも時の流れというものなのでしょう。
 そろそろ、お腹も空いてきましたので駅の方に戻ることにしましょう。先程の闇(くらやみ)坂の方まで、先程の側と反対の側(線路側)を歩くことにします。途中、乾物屋さんで辺りのお店について聴いてみたのですけれども、豆大福を買ったお店はこの日は営業していないようで、蕎麦屋さんは残念ながら閉店してしまったようです。

 線路の下をくぐって東側に出てミルパと呼ばれる大森銀座商店街のアーケードの入口が待ち構えております。アーケードが海側の方まで200mほど真っ直ぐに伸び、様々な飲食店や商店が軒を連ねております。まだこちらはシャッター通りにはなっていませんね(安心)。

 その線路をくぐる高架というかトンネルのすぐ脇に立って、そのミルパの様子を撮ろうとしたら、こんなお店がいつの間にか出来ているのに気が付きました。『やきとん 豚番長』という立ち飲みのお店です。黄色のテントが目を惹きますね。店内は厚めのビニールに囲われていますが、夏場はこれが取り払われてオープンになるようです。立ち飲み好きの血が騒ぎますね。これは早速チェックしたいところですけれども、まずは一巡りしてきたばかりなので、少々座りたいのも事実。

 それに今日はあそこへ、と決めて来たお店があるのです。ということで、こちらは後ほどということで、一本目の魅惑の小路を右に曲がります。正式には何と言う名前なのでしょうね?餃子の満州里さんや煮込みの蔦八さん、昭和の香り漂う大森飲食街ビルといつもふらふらと誘われるがままにここの小道に来てしまいます。
 手前に見えるフラミンゴさんというお店ではアサヒビールの文字が掲げられていますけれども、以前大森にはアサヒビールの工場があった関係なのでしょうか?その工場跡地に件のイトーヨーカ堂の新しい大森店が出来たようです。ワタクシが住んでいた頃はまだその工場もあったと記憶していますが。

 さて今回目当てのお店として来たのは、蔦八さんの一軒挟んでお隣にある『大衆割烹 たから』さん。以前ガラス戸越しに中を覗いてワタクシ好みの雰囲気がピンと来たのです。
 いざ、ガラス戸を開けて店内へ。うーん、大衆っていう感じですね、メインのカウンターに常連さんがへばりついて、テーブル席もあります。どちらかというと酔客がクダを巻いている馬券売り場近くのお店に似た雰囲気です。とりあえず様子を窺って大将に瓶ビール(大¥550)を頼みます。魚主体のメニュー構成でその中からイワシ刺しを頼みました。カメラを構えて、という感じではないので画像はなし。まぁたまにはこういう時もあるでしょう。と、奥さんらしき人が外から帰って来てお客に声を掛けています。申し訳ないですけれどここら辺でお暇させてもらいました。お通しなし、お会計も明瞭¥850でした。
 お次も、やはり前回気になっていたお店へ。少し離れて、大森駅の正面からだと比較的すぐな場所。『ホルモン焼、内臓サシミ 七厘』というお店。中が煙いのか入口のドアのレールに何かの駒を挟んで完全には閉じないようにされています。七厘(七輪とも)を始めとして炭を扱うところでは酸欠、一酸化炭素中毒の危険性もあるのでその対策も兼ねていると思われます。長いカウンターの奥には先客のサラリーマン3人組が楽しそうに飲んで、ホルモン焼きを焼いています。
 まずはホッピーをとメニューを見ると(((;゜Д゜)))ェェェェエエエエエ¥650ってマヂ?って思うようなお値段。まずここで凹みました。ホッピーは元々ビールが高くて飲めない庶民にとってのビールの代替品なのに、ビール¥550(ほどハッキリせず)の方が安いとはこれ如何に?それほど肉食ではないワタクシですので、カクテキ¥430(ほど。これもハッキリせず)をつまんでホッピーを飲みます。オールバックのオヤジさんはとっつき難そうでも、ひとり暇そうに飲むワタクシに、TV欄を広げてさっきから観ているんだけど、全く理解できないんだよ、と話し掛けてきます。ホッピーの中をお願いすると、結構タップリ注がれていまして、外のホッピーを使って調整。二杯目にして空にすると、お酒弱いの?と振ってきます。『最低三杯以上飲まなけりゃ(ダメだね:筆者補足)とのたまうのです。いやはや、なんともまぁ言ってくれるじゃありませんか!こちらはまだこれから先が長いので酔いを調整しながら飲んでいるというのに。それ以上居る必要もないので、飲み終えるとお会計してもらいました。今街角に溢れているホルモン焼き、もつ焼きのお店でホッピー、中お替り、カクテキつまんでアンダー¥1,000という時代に、うーんこれでは、と思うお値段でした。

 やはり先程の立ち飲み屋さんが気になってやって参りました、『やきとん 豚番長』さん。先程よりも確実にお店の中はお客さんが増えているようでカウンターにそこそこ居りますが、他はまだかなりガランとしています。お店の人と親しげに話している内容からして、もう常連さんとなっているお客さんもいるようで、まずはウーロンハイを飲みながら厚揚げの焼けるのを待ちます。少々手狭な様子ですが、これぐらいの方がむしろ立ち飲み屋さんらしいので好印象を持ちました。聞くと昨年末にオープンしたばかりとかで、これからが楽しみなお店です。それにしても我ながら立ち飲みが好きだなぁと苦笑しきり。

 少し休憩時間を挟んで、今日の戦績は一勝二敗の負け越しなので、ここらでまず間違いのないお店として手堅く富士川さんを訪れることにします。大衆酒場とはこういうもの、を体現化してくれる名居酒屋にして食事も充実のお店です。ホッピーを頼むと、特に指定しない限り、レディ・メイドと言いますか*1、お店の方が作ってくれるスタイルのものが供されます。もちろん、言えばボトルで外と中を出してくれるようです。そしてまたしてもイワシ刺しを注文。我ながら好きだなぁと思いますが、この間血液検査をしたときのこと、コレステロール値が医者をして『こんな数値は珍しい』と言わしめるほど善玉と悪玉コレステロールの対比数値(LDL‐C/HDL‐C比)が低いのは、この魚好きが少なからず好影響を及ぼしていると思います(嬉)。
 さてこちらのお店のイワシ刺し、これは素直に新鮮さが楽しめるもの。生臭さなど全く無縁のもので、そこを突き抜けた次元で物事を語り始める必要があります。やはりいいなぁこのお店は、とカウンターの店員さんは、顔を覚えていてくれたらしく、この辺りに住んでいるんだったっけ?と声を掛けてくれます。いえいえ、昔住んでいたので懐かしいだけなんですけれども、最近ではこちらのお店にお邪魔するのが楽しみなんですよね。

 そんな店内にズラリとぶら下がるアサヒビールの提灯。カメラを見せて店員さんに合図すると快く笑顔で応えてくれて、パチリ。スーパードライは苦手ですけれども、ここはこれ(アサヒビールの提灯)でないと決まりませんね。今回も満足させてもらって富士川さんを後にしたのでした。こうした手堅い良店を押さえておけると安心して飲めますね。また次大森に来るのが楽しみになりました。

*1:今流行のメイドさんとかではない、既製品の意