堀切菖蒲園からバスで白髭橋、そして無事帰宅

白髭橋

 さて今回、何故堀切菖蒲園を訪れたのかと言いますと、こちらの方の記事の中で、非常に印象に強く残っていたお店があるからなんです。ザッと地図を頭に入れて来た筈なんですけれども、まさかそんな場所にあるわけないだろうと、勝手に自己否定してこの街をぶらぶらと歩き回って駅まで来た時に、それはありました。

 堀切菖蒲園の駅前の道の向こうに目を見遣るとそこに探していたはずの『きよし』というお店がありました。やはり地図は正しかったのです。っていうか自分で勝手にありもしない他の場所を探していただけなのですけれどもね(恥)。そのお陰でこの街のことはかなり把握できましたがね。
 早速信号を渡ってみます。こういう時の信号待ちのじれったいことと言ったら。その奥にも道路が繋がっているので少し奥まで足を伸ばしてみましたが、マッサージというか接骨院があるくらいで、特に目ぼしいお店はなさそうで電気の消えている『きよし』さんに戻りました。

 人気(ひとけ)がなく、お店もひっそり。『終わったよ』の表示板が玄関口に掛けられていて営業前かと思いつつも、人の居る気配がしましたので戸口から声を掛けさせて頂きました。すると中から奥さんが出て来て、実は・・・と教えてくれたのですが、先月一杯で営業を一旦終了したとのことです(実際に訪れたのは4月3日)。すると、数日前までだったのですね、残念。それで今は移転して仮営業をする予定なので後片付けで居るのだということでした。知人の紹介で来たのだと言うと快く中を拝見させて頂けたのですが、なるほど『潜水艦酒場の異名』をもつお店と言うのはこういうことですか、と百聞は一見に如かずの例に漏れず、納得いたしました。これが閉店した後ではなく、営業中なら如何ばかりかと想像してみるのですけれども、こればっかりは事情が事情のため叶わぬ夢と、相成りました。
 奥さんが話してくれたのには、アド街ック天国にも二回ほど取り上げられている、とのことで店内を拝見しながら中に入った時に、道理で見たことのあるお店だと思い出しました。間もなく仮移転先の内装工事が始まり、5月から再開をするからその折には是非来て下さいとDMの送り先まで聞かれてしまいました。あの、初めてなんで常連でもないので、と辞去したのですが是非にと迫られ台帳に遠慮しいしい書かせて頂きました。この仮営業先も半年の契約で、その後の本営業の移転先もおおよそ決まっているそうですが、そちらはそれでまたそうすんなりとは行かないようで、何かと苦労が多いようですがそれでも堀切菖蒲園からは動く気はないようです。

 お目当てのお店を見つけたのは良いのですけれども、タップリ歩いてきて喉を潤せないのは残念、仕方がないので、先程歩いて見つけた角打ちの出来る酒屋(金子酒店)さんへ行くことにしました。ガラリと引き戸を開けると、他にお客も居なくて、何故かビールケースを積んだ簡易テーブルに封切り前の発泡酒の缶が置いてありました。冷蔵ケース前に陣取って、人の良さそうな女将さんが何にしましょうか?とふって来るので缶ビール¥240(350ml)を所望します。500mlもあるけれど、こちらは酒屋さんで買うにしてはチト高いような値段。

 聞くと、最初(創業58年)からこのスタイルで角打ちをしていたのだそうで、以前はもっと広く線路際までの広さを誇っていたそうですが、今は減っちゃって、とお店の半分をテナント貸しにしたそう。ホッピーも楽しめて、近所のお馴染みさんにはボトル売りをして置いておくこともできるようです。
 2本目は、割安なウィスキーのハイボール¥165にしてボーっと過ごす時間の贅沢さを感じつつも、後から入ってきた常連客の親父さんのクダを巻く様、誰ともなく喋るような呟くような愚痴に辟易してきた頃、他に客が入ってきたのを潮にお暇することにしました。
 堀切菖蒲園の駅はすぐ近くなのですが、これから代案で向かおうとしている南千住までは意外と乗り換えが面倒で、金銭的にもそれほどメリットを感じられないので、駅前の大通りでバスを探すことにしました。おもちゃ屋さんの前に京成のバス停を見つけ時刻表を見ると新小岩行きは本数があるものの、目当ての南千住へは直通がなく、浅草寿町行きが何とか使えそうです。それでもバスが来るのは25分後と非常にビミョーな気分にさせられます。

 ようやくやって来たバスに乗り込み、墨提通りの白髭橋のたもとでバスを降ります。さすがにここまで歩いて来る気にはなれませんでしたからね。それでもここからは再び歩くこととなるのですが。白髭団地を右に見ながら、かつて知り合った女の子がここに住んでいたことを思い出すのですが、名前がちっとも浮かんできません。最後まで思い出すことなく、白髭橋の東詰めに到達。

 橋を渡りながら、ふと右側(南千住駅方面)に目をやると空の色が大変なことになっています。鈍色(にびいろ)というのでしょうか、今にも雨が降り出しそうな色です。先程までの青空が嘘のようです。白髭橋を渡り終えると、先程来た西詰め、これで大きく回って帰って来たことになります。そのまま明治通りを進み、今度は南側の歩道を歩きます。平賀源内氏の墓標を改めてしげしげと眺め、そこで左に折れて中通りを歩いて見ます。どうという事のない住宅街のようですが、やはり木賃宿が出て来るのはこの辺りらしさが現れています。

 するとそこにいきなり、と言う感じで公園に大量の人と、ブルーシートで作られた『家』の数々。そう、ここが本で読んだことのある玉姫公園なんですね。静かに、という訳でもなくうるさく騒ぐでもなく、人々が屯(たむろ)しています。カメラを向けるのは憚られましたので、写真はなし。一種のカルチャーショックを受けました。代わりにその道を真っ直ぐ進んだ突き当りに見えた大林さんの写真を貼っておきましょう。そろそろ日も暮れてきましたし、腹具合も空いたとは言えないもののお酒が美味しく飲めるぐらいにはなって来ました。
 ここまで来たら、やはり丸千葉さんは外せないでしょう、ということでいつものようにカウンターに潜り込みます。ホッピーを頂いて、やっちゃんの顔の日焼けの訳を聞いたりいつもの丸千葉さんの賑やかな雰囲気を楽しみます。まぐろブツをつまみに群衆の中の孤独を楽しむのもまた一興。ふらりとやっちゃんが通り掛かりに声を掛けてくれて我に帰ったり。

 軽めにこの日はお仕舞いにして、今度は吉野通りの向こうにある遠州屋本店さんに初めて入ってみることにしました。案の定雨が降り出していましたが、すぐ目と鼻の先ですから、軽く駆け足で店内に入りました。丸千葉さんとはうって変わって、落ち着いた雰囲気。高級、と言う訳ではないのですが、少しお値段はお高めです。感じの良いオネーサンと厨房に立つ若手のお兄さんはご家族か?そんな下らないことを考えながら、油揚げ焼を注文。丸千葉さんとはまた一味違った静謐な雰囲気でクールダウン。お店を後にして目の前のバス停から蔵前方面へ向かうバスに乗り込みました。