古人の知恵に敬服する

身欠き鰊を焼いてみました

 ワタクシは普段、家では昆布と鰹節でとった出汁を使って日々の料理や味噌汁を楽しんでいるのですが、この昆布のダシガラというのが、次第に溜まっていってしまうのですナァ。水から入れて火に掛けて、一時間後に沸騰する直前までになるような火加減に調整して昆布出汁をとるのですけれども、この昆布、捨てるのはもったいないし、かと言って定番の佃煮を作るのも過去に何度かやりましたが、食べ飽きちゃうんですよねぇ、消費量もタカが知れているのだし。ということで、冷凍しておいて煮込みを作る時に引っ張り出して出汁を取れるように一緒に煮たりしていましたが、今回はそういえば、と不意に思い出して昆布巻きを作ってみようと思い当たりました。
 昆布巻きというと中に芯となるような某かの具を入れるを巻き込んでいて、鰊(にしん)や鮭というのが我が故郷北海道では多かったようですけれども、豚肉を巻き込んだものもあるようです。まぁ今回は定番の鰊を入れて作ってみようということで、実家を出て長年暮らして参りましたが初めて身欠き鰊というものを買ってみました。
 錦糸町駅ビル『テルミナ』の地下街の魚屋『魚の北辰』で探してみるとしっかりと干された鰊の身が何本か入ったものが¥398で販売されていました。初めて買うものですが、チョッと予算で考えていた額よりは高いように思えて、他のお店でも探してみることにして、近所のスーパーで見るとやはり同じ価格で、こちらの方は適当な大きさにカットされた物です。迷ってしまい結局その日は購入に至らず、あくる日にカットされたものを購入しました。
 身欠き鰊というのは、下拵えとして米の研ぎ汁に浸すというのは何となく聞いたことがありました。けれども実際に自分で試してみるのは初めてです。買ったのも初めてなので当然ですが。米の研ぎ汁に浸すこと約半日。硬かった鰊の身はすっかり元に戻っているようです。しかも今回の身欠き鰊というのは鰊の身以外に食用の油を使ってありましたが、米の研ぎ汁に浸したことで、米の糠の成分のお陰で油も多少抜けて浮き出しておりました。
 悪戦苦闘することしばし。結局昆布巻きはカットされた身が短過ぎて巻くのは困難を極め、写真でお見せするような出来には仕上がりにはなりませんでした(泣)。また昆布の量に対して鰊も多過ぎたので普通に鉄串を打って炭火で焼いてみました。

 焼く前から判っていたことですが、とても身が柔らかくふっくらと焼き上がりましたヨ^^v。実は実家では朝ご飯のおかずとしてしばしば出されていたのですが、その当時は身欠き鰊というとただグリルで焼いたものを何故だか醤油と砂糖を混ぜたタレに浸けて出されたものを食べていましたが、今となっては何であのような食べ方をしていたのかは判りません。ただ硬く、甘じょっぱいだけの代物で当時から美味しいものとは思えませんでした。しかし、今回このように米の研ぎ汁で戻したものを焼いて食べてみると非常にふっくらと柔らかく、適度に脂ものっているしなかなか味わい深いものです。
 身欠き鰊を使ったものでは京都の『にしんそば』が有名ですし、以前会津を訪れた際に見掛けた『にしんの山椒煮』も美味しいものでした。いずれにしても今現在の流通が発達する以前から、保存性を高められた硬い身欠き鰊を、このようにふっくらと柔らかに戻す古来の知恵というものに今回は感服した次第であります。