名店の予感〜七伍屋・錦糸町〜

七伍屋 メニュー

 錦糸町という街に住んで早10年近くが経ちます。JRでは総武線各駅と馬喰町から一つ目の快速電車の停まる駅としてなかなか大きい街のつくりになっていおります。更に数年前の半蔵門線の延伸・開通で渋谷方面にも便利になり、新宿駅まで21分、東京駅までも8分ほどでアクセスできるという抜群のロケーション。ここから引っ越してどこかの街へ移動する気など起ころうはずもありません。

 街の規模としては大きいし飲食店もそれなりに数的には揃っておりますけれど、実際住んでいるとコレといったお店がないのも事実ではあります。わざわざ遠くから来てこの街で飲もうという気を起こさせるお店は数少なく、もつ焼き・レバ刺しで有名な『まるい』も錦糸町と押上の丁度間ぐらいに位置し、昔からのお店で有名なお店は『三四郎』ぐらいなものでしょうか。チェーン系の居酒屋は多いのですが、そんなお店はどこにでもありますから足をわざわざ運んで、という奇特な方は少ないでしょう。住んでいる割に、他の街に出向き飲み歩くことが増えたのもそういう理由があるのです。

 飲食店に事欠く錦糸町の街も少しずつは変貌を遂げていることもあり、過日、たまたまウェブで検索していると全然知らないお店ですが、かなり評判の良いお店の情報にバッタリ出くわしました。錦糸公園の南側で線路の北側、地元ではロッテ会館といまだに呼ぶ方が多い、ロッテシティの界隈です。ワタクシが過去の記事に取り上げたのは『侫武多(ねぶた) 錦糸町店』が近所にあります。下調べした地図ではどうも錦糸公園沿いの北斎通りの流れの道に面しているように見えますが、実際には一本裏手、中通りに面しております。

 一度目は、そんな訳で当たりをつけていた場所ではなくグルリと探した挙句に、満席で入れなくて涙を飲んだのですが、そうなると俄然行きたくなるというもの。二回目は満を持して、というか夕方混み合う前に、と急いで行くと、これが拍子抜けしてしまうぐらいの口開けの客となってしまいました。魚料理の評判がすこぶる良いのですけれど、お通し(↑)の茄子の味噌掛けを頂きながら、メニューを見ると大好物のレバ刺しがあるので、まずはそれを頂きました。
 初めての訪問を聞かれ、前回はフラレたんです、と話をきっかけにつらつらと話をするようになり鱧(はも)を頂くことにしました。黙っていると職人っぽいご主人ですが、意外にも話をしてみると気さくな方で奥さんも含めてご出身地の話で盛り上がりました。ワタクシはバイクでかなりの地を走ってきましたので、おおよそその土地のことは知っていたりするのですが、良くご存知で、とビックリされることが多いのです。
 この日は特製酎ハイ(いわゆる下町のハイボールタイプ¥350)を4杯、レバ刺し、鱧の落としとお通しで¥3,000ほどでした。気に入ったので再訪して様子を見てみることにしました。

 数日後、前回は杯を重ねるごとに饒舌になってしまいましたから、少し自重いたしまして、それでも同じく酎ハイを頼んで、お通しは写し忘れてしまい、記憶もないのですが前回とはまた違ったものを。すぐ後に常連らしきお客さんが続いていたので、色々とやり取りがある中、のんびりとメニューを眺めます。
 通常の定番メニューもありますが、魚はその日によって入れ替わるようで、この日は"ほや"が気になったので頼むことに。東京で食べられるほやの鮮度というのはいささかいかがなものか?と思うお店もあるので(特に刺身では)、これでお店の実力も推し量ることができると言うもの(怖)。
 たっぷりと丸ごと一個を捌いたほやは東北などで頂くものには及ばないものの、スーパーでビニールに詰められている剥き身のものや殻に入って¥98ぐらいで売られているものとは別のレベルのもの。これはなかなか良い具合です。
 これはお酒が欲しくなりますが、こちらのお店の弱点はまさしくそこで、日本酒の品揃えが今ひとつ(ゴメンナサイ、御主人)。浦霞とともうひとつ一の蔵の二種類、後はナショナルブランドで頼む気が起こらない代物。焼酎は比較的揃っていますが、魚介系の刺身にはワタクシは日本酒がよろしいです。
 追加した骨せんべい。素揚げではなく、軽く衣を着けて揚げてありました。この日も酎ハイとこれらの料理で¥2,300ほど。錦糸町北口では、近くに『ぢんぢん』という昔馴染みだったお店も魚介系では名を馳せていますが、甲乙つけ難いというのはこのことを言うのでしょう。またどちらもお店の規模からして日本酒に対しては期待薄というのが偽らざる感想です。
 日本酒で充実しているお店では、『井のなか』も何度か行きましたが(こちらはマスターの工藤さんとは旧知の仲)、肉系に強いという印象があります。もっとも魚介系と日本酒に強いお店は掃いて捨てるほどありますので、これはまたひとつの見識でしょう。
 3回目の訪問はつい先日のこと。今回のお通しは鶏皮のポン酢。過去のお会計からするとお通しは¥250ぐらいでしょうか、このお値段の手間の掛け方は上等です。上に添えられているのは梅ソースです。目の前のガラス瓶に入っているのはご主人の田舎で漬けた梅ということでかなり気になりますが、それを使っているかは不明でした。
 この日はカワハギの刺身¥680。肝を添えてありますのでもちろん肝醤油で濃厚に頂きます。刺身は三点盛りもあるし、予約の6人客の宴会を見ていると6種類の魚を使い、またコースになっていてメニュー外の料理も楽しめるようです。今後また色々と食べてみたいと思わせてくれる、こんなお店も錦糸町に出来て今後に期待します。