魔術師/J・ディーヴァー

 また暫く振りに読んだ本の記録を残しておきます。

魔術師(イリュージョニスト)〈上〉 (文春文庫)

魔術師(イリュージョニスト)〈上〉 (文春文庫)

魔術師(イリュージョニスト)〈下〉 (文春文庫)

魔術師(イリュージョニスト)〈下〉 (文春文庫)

 J・ディーヴァーは以前『石の猿』を読みましたが、今回は二回目。この人は結構作品が多いようなので、完読するにはまだこれから先が長そうです。『石の猿』も面白かったけれど、今回の『魔術師(イリュージョニスト)』もかなり面白く読みました。ファンになってしまうかも。マジックというより、大掛かりな仕掛けを駆使して捜査陣を翻弄する場面など、ハラハラしますし、警察に保護されている筈なのに主人公の一人リンカーン・ライム(主人公というとこのライム氏の彼女のアメリア・サックスもそうなんだけれど、この二人はひとつのユニットみたいなものなんですね)が犯人に脅(おびや)かされる場面もゾクッとしました。
NEXT―ネクスト〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

NEXT―ネクスト〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

NEXT―ネクスト〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

NEXT―ネクスト〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

 マイクル・クライトンは本当に久し振りに読みました。以前読んで記憶に残っているのは『ライジング・サン』という作品。これはいずれ叉の機会に述べることにして、今回のは、うーん何というか斬新というかバラリバラリと色々な、一見まとまりのないような話が最終的に結合するという、映画で言うところのタランティーノ的な小説です。個人的にはあまり感心はしませんけれど。ただなるほどな、と思わされるところもあってひとつの勉強みたいな感覚にとらわれました。
スパルタの黄金を探せ! (上) (ソフトバンク文庫NV)

スパルタの黄金を探せ! (上) (ソフトバンク文庫NV)

スパルタの黄金を探せ! (下) (ソフトバンク文庫NV)

スパルタの黄金を探せ! (下) (ソフトバンク文庫NV)

 カッスラーも出会ってから長い付き合いになっております。もう20年以上ですね、学生時代からですから。馴染んだ服を着るような感覚で、読みやすいですけれど昔の作品ほどワクワクする感覚が訪れません。色々な作家を読んだせいもあるし、やはりこの人が一人で書いているのではなく、共著というスタイルになってからパワーダウンは否めないといったところでしょうか。
 ただ、『日本海の海賊を〜』日本海の海賊を撃滅せよ! (上) (ソフトバンク文庫NV)に比べると、出来は良かったようです。
失われた深海都市に迫れ〈上〉 (新潮文庫)

失われた深海都市に迫れ〈上〉 (新潮文庫)

失われた深海都市に迫れ〈下〉 (新潮文庫)

失われた深海都市に迫れ〈下〉 (新潮文庫)

 もう一つ、カッスラー氏の作品。読んだ時期は違って、こちらは比較的最近。先程も述べましたが、共著ということで、作品の大筋を考えて共同執筆者に任せているのか、逆に共同執筆者にあらすじを考えさせ、自分で仕上げているのか。どちらにしても一人で考えて書いているならまずは不可能なハイペースで出版されている気がします。
 武器商人の家系にまつわるきな臭い話が軸になっていまして、これもなかなか楽しめた作品。でも10年後にまた買って読もうかというと、どうでしょうか?
QD弾頭を回収せよ (新潮文庫)

QD弾頭を回収せよ (新潮文庫)

この間秋葉原で古本を売っているお店があり、『QD弾頭を回収せよ』が¥105でしたので、速攻ゲットしましたが。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 この作家の名前は初めて目にしました。『伊藤 計劃(いとうけいかく)』と読むそうです。まず自分では買おうと思わない不気味な装丁です。無論勤め先の社長から回ってきた物です。サスペンスや戦争物、スパイ物が好きなのでそういう系統だと分類されて回ってきたようです。でもね、本当のこと言うとあまり日本人の作家は興味ないんですよね、武器やそういった装備のディテールに欠けるきらいがあるので。絶賛されているような感じだけれど、ワタクシにはあまり合いませんでした(涙)。 ソ連崩壊からロシアに変革しそれと共に冷戦の終結を迎え、もはやスパイは共産圏にはいられなくなり、敵はイスラムの過激派になってしまいました。今ひとつイスラムの国々の印象が強くないので、そこまでのめり込めないのがこうしたイスラム系のテロリスト物。ただやはり、このフォーサイスという人は実に綿密にプロットを組み上げるのが上手いようで、これは小説の中の虚構なのか、実際にあった話なのか煙にまかれたような感覚に襲われました。でも本当にあったのかも知れませんね。これが他の作家ならエンディングはまた違ったものになり、よくできた話だ、で終わるのでしょうけれど。
蛹令嬢の肖像 (集英社文庫)

蛹令嬢の肖像 (集英社文庫)

 この人も初見。綺麗なカバーの絵で法律物だと、読み始めてすぐに判りましたが、もうひとつのめり込めませんでした。話は意外な顛末で、なんだか腰砕けに終わってしまったようで、はぐらかされた感じ。面白く読んだ方には失礼多謝。
ユダヤ警官同盟〈上〉 (新潮文庫)

ユダヤ警官同盟〈上〉 (新潮文庫)

ユダヤ警官同盟〈下〉 (新潮文庫)

ユダヤ警官同盟〈下〉 (新潮文庫)

 これまた、評価はできない小説でした。テーマがそうなんですけれども何せ暗い、の一言に尽きます。ユダヤ人の方々の迫害されてきた苦労の歴史は理解したいと思いますが、これがハードボイルドの傑作かというと、ハードボイルドって何?って思ってしまいます。生硬な文章で、拙い場面展開なのがそうだとしたら、過去のハードボイルドの名作に失礼だと思います。本の惹句もあまりに誇大広告的なものが過ぎるという気がしましたし、もしそれが本当なのなら皆理解して評価しているのかなぁと疑ってしまいます。

ヒューゴー賞ネビュラ賞ローカス賞の“トリプル・クラウン”を制した

とにかく読み終わるのが待ち遠しい小説というのも珍しいです。同じユダヤ人関係でかの有名な『ソフィーの選択

ソフィーの選択 (上巻) (新潮文庫)

ソフィーの選択 (上巻) (新潮文庫)

も昔読みましたが、同様につまらなくて最後まで読み終える前にゴミ箱に叩き込んだ憶えがあります。それでも最後まで読んでおけば良かったかなと軽く後悔していますけれど。