油麩を使って煮物を

 お麩を使った料理というと、身近なところでは味噌汁の具に使ったり、平たい庄内麩ではすき焼きに使われたりしますね。ワタクシは仕事で北関東を回ることが多かった時代に、酢の物に入っていて驚いたと同時に、これもありかも、と可能性を認識しました。お麩というと小麦粉を水で練ってグルテンと呼ばれる粘り気を出したものを焼いて作られ、ほとんど癖がなくそして、煮汁や出汁を吸ってその旨味を背負い込んでくれる優れもの。その代わりにその出汁がなければ味はないという『虎の威を借る狐』的な存在でもあります。
 数年前ですが、地元錦糸町の山形料理を出す居酒屋で飲んでいる時に、出された煮物に変わったシロモノが入っていました。茶色なんですけれどフワフワしていて捉えどころがないにもかかわらず、餅のように溶けている訳でもないのです。山形出身のご主人に尋ねると油麩というものだとか。お麩を揚げて作ってあるようです。その後すっかり忘れていましたが、スーパーで見つけたので購入。今回は煮物を作ってみました。

 油麩は幅広くは仙台麩と呼ばれているようですが、仙台よりやや北東部にある登米という場所の名産品だとか。東北地方ではポピュラーなのでしょうか?いつも作る『うま煮』を鶏肉抜きでその代わりに油麩を入れてみました。水で戻してと書かれていましたが、油を吸って水に浮いてしまうし、重しを掛けて10分ほど浸しておきましたがほとんど吸い込みませんでした。人参、里芋、干し椎茸を鰹と昆布の出汁で炊いてあらかた火が通ったところで、油麩を2cmほどの輪切りにして手でギュッと絞って煮汁に投入。さすがに断面からはお麩ですからスポンジのように煮汁が吸い込まれていきます。
 出来上がりは、鶏肉がないにもかかわらず、コクが出てこれはなかなか良いものです。カロリーを控えたい向きには、やはり油を使っているのであまり趣旨に沿わないかも知れませんが、ベジタリアンにはピッタリかも。