福岡県三都物語・博多編

 米子の夜を発ち、一路山陽方面、岡山、広島、山口と漆黒の闇をひた走り気がつけばまだ明けきらぬ薄い明かりの中建物の看板や文字に小倉の文字が見えています。いつの間にか関門海峡をくぐり抜けて九州に入っていたのですね。いくつかの地点で停車、下車する人を降ろしつつ博多バスターミナルに朝7時ごろに到着。バスターミナルってどこにあるんだろうと、携帯のバッテリーが切れているので検索することも出来ずに、とりあえず外に出てみると何とまぁJR博多駅に隣接する好立地。素晴らしいです。



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 朝も7時半近く、足早に改札へと向かう通勤客の流れに反して、長距離かつ長時間バス移動してきた為にもたつく足取りの旅人は人の流れに翻弄されるのでした。さてと、こんな朝早くに博多の駅前に放り出された旅人ですが、土地鑑もなく久しぶりに来た街でありますので、どこに行こうかと考える事しきり。そういえば空腹を感じていますし、朝というと市場になら何か美味しいものでもあるのではないかと、柳橋連合市場がふと思いつきました。以前来た時にたいへんその佇まいに感銘を受けた市場でございます。


 もちろん市場ですから朝から沢山の人々が忙しそうに働いています。その人々の空腹を満たすようなお店が、場内にあっても良さそうなものですが目に入りませんでした。香ばしい香りの珈琲店なんかは目立っていたんですけれどもね。きっと聞けばよかったのかもしれませんが、すぐに見つかるものだと思っていたのでやや拍子抜け。これは意外と観光客も少ないし飲食店は無いのかもしれませんね。
 そうは言っても、しばらく歩くと何となく見覚えのある場所にでてきたのが判りました。渡辺通という通りです。その向こうにウェブで見掛け、九州の出身者との話題に登るウエストというお店が目に入りました。


 外観写真を撮って、と。早速入ることにしましょう。・・・って?
折しもこの日は火曜日の朝。ドンピシャでその時間にまんまとハマっていたのでした(TдT)。いやぁこれにはヤラれましたね、参りました。よほど右横にあったファミリーマートで食料を調達しようかと思ったぐらいです。
 ということで、ウロウロと歩き回りながら流れ流れていつしか天神と呼ばれる地域まで辿り着いていました。それにしてもこれだけの大都市で、朝から、もしくは24時間営業の飲食店を歩いている道中見掛けなかったのはどういうことでしょうか?現在住んでいる東京辺りですと、〜食堂というその付近の地名の取り入れられたお店ですとかやよい軒のようなお店がそこかしこにあるのですけれど、そういった定食大衆食堂系のお店が目につかなかったのは不思議でなりませんでした。確かにコンビニやファストフード(マクドナルドなどのハンバーガー系)は散見していましたが、朝からの需要がないのでしょうかね。
 結局天神まで来ていつぞやのお店とみてもまだ開いている気配がなく、そう言えばと駅そばならぬ駅の構内にあるうどん屋さんを探すとありました、ありました♪やりうどんというお店で、改札にも近いですが通りすがりの旅人にはピッタリのお店です。

 朝うどんセットということで、ハーフうどんにかしわおにぎり1ヶで¥288とこれまた嬉しいお値段設定。普通にかけうどんでも良かったけれど、かしわおにぎりだなんてこれぞ、地方色たっぷりの言い方をされていたらそそられないのは間違いなのですね。
 色ほどには薄口ではない意外としっかりした出汁の効いたうどんは空腹のお腹に染み渡りました。うーん、これで一日の行動が始まるのです。休憩がてら近場のマックで充電しながら食後の珈琲を。っていうか、観光って感じで来ている訳でもないですし、要するにお腹に隙間ができるまで暇なんですね、読書タイム。
 意外とエアコンの効いた店内を出ると、陽光眩しくポカポカを越えた初夏の陽気。TVで以前見掛けたお魚の美味しいお店も早めのランチタイムなのでまだすんなり入れそうですが、こちらの胃袋の具合がまだ余裕が無いため却下。う〜む、食べられなくなるというのはこういう弊害があるのですねぇ。

 天神から中洲方面に歩いていると見掛けた一蘭本店。昼時少し前ともあってそこそこ入っていますが、行列ができていたりしないので入ろうとすると入ることが出来そうなのですがまだそんな気になれません。それにしてもせっかくここまで来て食べられないのが癪だなぁ。

振り向いたところにある、レトロ感満載の大洋映画劇場。手前のお隣も付き合ってなのかいい具合の建物。チョコっと気になる横丁であるのでズンズンと進んでいくと見えちゃいました、こんな素敵なお店。
 店名も潔い『酒一番』これで昼間から飲めたら最高なんですけれどもね、残念。夜に来ようっと。そう、ここはもう中洲に入っているんですけれども、夜の歓楽街である中洲では昼から飲めるお店が見当たらなかったんですよね。もちろんこまめに探せばあったんでしょうけれども。これは意外でした。

 って、結局営業中のウエストを見つけちゃったから入っちゃいました、初☆ウエストです。シンプルにかけうどん280円。揚げ玉とねぎはテーブルに備え付けになっていてかけ放題です。かけうどんそのものはかまぼこがひと切れ乗っているだけでした。実はこちらの店、17時からはツマミを充実させた飲み屋さんを兼ねたうどん屋さんにも変身するのですけれども、魅力的なメニューが揃っているにもかかわらず、キッチリ17時からの提供になっているようで、昼間はビールと酒ぐらいしか出さないみたいです。ビールにうどんじゃぁねぇ、考えただけでお腹がいっぱい。

 食べ終えてすぐ近くにあった公園で一休み。しばらく横になって再び街を散策していると、偶然にも以前TVで見かけた『かろのうろん』なるお店を発見。調べてみますと

生粋の博多弁では”だ”行を”ら”行で発音するため、店名の「かろのうろん」は「かどのうどん」という意味になる。

福岡県観光連盟HPより

 ということだそうです。江戸っ子が『ひ』と『し』がゴッチャになってしまうというのは有名だけれど、博多弁にもこういうのがあるのですね。
 それにしても定休日とは残念、でももうお腹もいっぱいだし、次に行きましょう。

 今夜のお宿を探すために再び天神近くまで戻ってまいりました。電話帳で当たりをつけて予約を入れますと、春吉というところに安宿をゲット。ホテルというよりは旅館の方が気分が出るんですよ、こういう時は。ひと安心してついつい昼酒を。前回博多に来た時に見つけていた立ち飲み屋さんで、今回も訪れました。ビル一棟が同じグループなのか飲食店で占められていまして、焼き肉、定食・ラーメン店、と一階・地下一階の立ち飲み屋さんがあります。角屋食館と銘打たれています。
 最初に瓶ビールとしめ鯖を注文しちゃったけれど、お酒のほうが正解だったかなぁと反省して、お酒と酢モツに早々と切り替えました。酢モツは馴染みがないですが、ガツを極薄切りにしたものにポン酢が掛けられているようです。とここらで、一旦宿に向かってシャワーを浴びさせてもらい一寝入り。

 先述の太田和彦氏の著作に出てきた『ホルモンみすみ』なるお店が偶然にも宿からすぐ近くにあることが判り、テクテク歩いて3分ほど。すぐに見つかりました。表通り沿いには飲食店が軒を連ねているのですけれども、そこから脇道に入ったところにひっそりと佇むこちらのお店。


 メニューはこれだけ、著作の中ではホルモン一串120円となっていたけれど、現在は190円になっています。それよりも凄いのが、このビールの種類の豊富さ。こういうのは珍しいと思いますね、実に。
 朴訥とした雰囲気の漂う御店主と語らいながらビール(相変わらず)を一本と串が5本ばかり。後に二人組が入って参りましたので、堪能させてもらってお店を後にしたのでした。

 すっかり夜の中洲に参ります。

 昼間に目をつけておいた酒一番さん。ガラリと開けるとカウンターにびっしり。一人なので何とか入れましたが。メニューを眺めて、お酒を注文。


 何でか知らないけれど、つい玉子焼きを注文しちゃいました。あ、食べちゃった、一口。飲みながら隣の人の話を聞くとはなしに聞いていると出張で関東から来ているよう。うーん、地元の人の話を聞きたかったかなぁ、残念。反対隣も明らかに旅行中の夫婦連れだし。焼き鳥は前日の米子でもそうでしたが、肉と玉葱が交互に挟んであるタイプ。またしてもズリを頼んでしまいましたよ。何だかんだ言っても良いお店でした。