福岡県三都物語・小倉編

小倉駅前 おでん庄助さんにて

 前夜不意打ちで宿泊場所の変更、本意ではありませんが久留米の夜を早々と切り上げ、西鉄で博多に舞い戻ったワタクシはまたしても、朝の定点観測。新天町内にある『ごろうどん』というお店。


 10時開店と飲食店としては早めの開店時間ですが、この新天町というアーケード街自体の開店時刻に合わせてあるみたいです。かけうどん¥380なり、順調に毎日値段が右肩上がりです(苦)。そろそろかけうどんだけというのもマンネリ感たっぷりなので、ごぼう天を入れたものにも惹かれますが、うどんの出来上がりのほうが早まりそうな気配でしたから断念。ちなみにこちらのお店でごぼう天うどんというと、こんな感じらしいです。ワタクシのイメージしているのはごぼうのスライスを天ぷらにしたものではなく、かき揚げ天なのでこちらのお店でいうところの、助六うどん¥530になります。
 博多うどん独特のフカフカ感としっかり利いた出汁のおうどんはこの数日間で一番のお味でしたよ。

 天神からバスに乗ってJR博多駅に移動、やって参りました北九州の玄関口たる小倉駅。駅ビルは近代的なものでJRだけではなく北九州高速鉄道(モノレール)が突き刺さっているといった印象。新幹線も入っているし、便利そうな街ですね。とりあえずブラブラと街を歩いてみます。駅前のターミナルをぐるりと回りふらふらと引き寄せられるように魚町という繁華街に紛れ込みます。朝10時から営業の立ち飲み屋さんもあるし、博多に降り立った時の印象とは違って、活気に満ち溢れている感じがします。天気の良し悪しにも左右されるのでしょうが、この日は前日の久留米の雨降りとは打って変わってのピーカン。久留米は残念ながらあまり活気という点では今ひとつでした。これが逆の天候条件ならまた違って逆の印象もありうるのです、難しいものですね。
 四方に伸びるアーケード街を探索し終えたワタクシは引き寄せられるように駅近くの煤けた地区へ。

 ご覧のとおりの煤け具合。

 グルリと一角を巡るとこんなこじんまりとしたアーケード。それにしても小倉はワタクシ好み。立ち飲み・角打ちが本当に多いのです。短いアーケードをくぐり抜けると先ほどのお店の正面口。

『立飲コーナー ていしゃば』さんです。これは入らない訳には参りませんね。女性お二人で切り盛りされていて、旅人に気を払いながら仕込みに忙しそうにしています。瓶ビールを頼みながら、カウンターに並んでいるお惣菜を眺めます。

 数日野菜が足りていない感じがしていたので、煮上がって美味しそうなホウボウの煮付けは涙をのんで我慢し、肉じゃがを温めてもらいました。奥にちらりと見えるのは生まれて初めて食べた『おばいけ』なるくじらの料理。臭みは全くなく酢味噌でさっぱり。これ九州に来て至るところで目にしていたのでこれでようやくスッキリしました。
 最初は警戒心を少し漂わせるオネエサンでしたが、最後には少し打ち解けて話してくれた年かさの方の女性。実は嫁いでやって来たんであって、元々は東京の人だとのことで、夜にまたおいでと言ってくれたのは旅人の心にグッと来たのでした。

 こんな粋なはからいもあって瓶ビール1本、レモンハイ3杯飲んでも¥2,000掛かりませんでした。
 少し遅目の昼食で時間をずらしての一平というお店でのとんこつラーメンを堪能し、近場の河原でゴロリと昼寝。うーん実に気持ちが良いものです。初夏の日差しというにはやや強すぎるくらいの日差しの下、30分ほど。旦過市場へ向けて再び歩き始めます。

 博多の柳橋連合市場と同様、非常に活気のある市場。思っていたよりもかなり一般向けにふられている印象です。奥の方に(駅から見て)、渋ーい角打ちを発見。これが太田和彦氏の著作にも出てきた『あかかべ』さんというお店です。開け放たれた間口いっぱいのお店にはズラリとお酒が並び、どこからでも飲んで下さいと言わんばかりにピカピカのボトルが待ち構えています。先客はおらずに、近所のおっちゃん・おばちゃんが世間話に来ているぐらいでした。お酒を所望し、一杯を注文しようとしたら半分でもウチのは多いからと勧めて下さった女将さん。確かに半合以上入りそうなグラスに銘柄は不明ながら飲みやすいお酒。小倉名物の糠床煮を頂きます。いろいろな魚を煮付けるようですがこちらは鯖でした。糠床というからもう少しモソモソするかと思いましたが、意外とすんなり味わうことが出来、甘辛い味付けはお酒にもご飯にも合いそうです。


 基本的に店内に『撮影NG』と貼られているのですが、オズオズと若旦那に尋ねると快くOK下さいました(嬉)。いやぁそれにしても渋い佇まい。さぞかし鮮やかだったろうと推測される緑の暖簾、紺色だったらもっとワタクシ好み間違いなし。芋焼酎お湯割りも頂いて満足しました。
 市場の近くを散策すると街中にもかかわらず温泉施設が見つかりましたので入ることにします。ユックリと温泉に浸かりひと汗を流してさっぱり。さてそろそろ夕刻も迫り陽が傾いてまいります。昼間に見つけておいた居酒屋へと参りましょう。

 武蔵という居酒屋さん。その佇まいは商店街の中でも異彩を放っておりました。やはり後で調べると太田和彦氏の著作の中で触れられていたお店でした。氏とは好みが被るんですなぁ、ワタクシ自然と。

 お酒は地元のもの、全国の有名どころと織り交ぜて取り揃えられていますが、旅人ですから地の物をと九州菊純米吟醸¥450を。『まこ』という見慣れないメニューは魚の子の煮付け。確か鯛だったような、この日は。ちょっと自信がありません、今調べたらサワラだったのかも、と朧げに消え行く記憶は彼方に・・・。

 この圧倒的な存在感のメニューと武蔵という文字。魅惑のおしながきです。ひと品¥300ぐらいから手頃なお値段で揃っています。お新香や鶏の唐揚げを頂いてお店を後にします。


 その後、夜の帳の降りた小倉・魚町。フラフラと歩きまわりお店を物色するも、自分の原の満腹具合とどうにも決め手にかけるなぁと彷徨い歩くことしばし。いつしか迷い込んだビルの地下街。魅惑のセットドリンク1杯、おでん二品、刺し身、突出し、焼き物2本付き何と¥1,000。おでんもお仕着せではなくチョイスさせてくれたのは嬉しかったですね。隣りに居た妙齢の女性二人と楽しく会話してこの日の記憶はストップしました。