クチャラーと舌鼓

 ウェブ上でのネットスラングともいうべき、インターネット上で使われていることがあるけれども、学校教育の中では取り入れられていない言葉として、クチャラーという言葉がありますね。ものを食べるときにクチャクチャと音を立てて咀嚼する人物のことですが、実に上手い表現だと思います。本人に自覚がなく他人から指摘されても意に介さない、もしくは逆ギレするという甚だ迷惑な方もいますが、言う方も言いづらいですね。身の回りの人に居ると一緒に食事がしたくないのですが、先輩や上司だったりするとそういう指摘も出来ずに悶々とされる方も多いことと思います。ワタクシの場合、小さい頃から躾けられてきたので、自分では音を立てて食事をしていないとは思いますが、録画や録音をして確認した訳ではないので時折クチャっとなっていないか気にするようにはしています。
 居酒屋などで父親世代の男性客にこうした現象が頻発していますし、最近では甘やかされて育ってしまった若者なんかも多いように思います。じゃぁ同世代はどうなのかというと、やはり人それぞれですね。どんなに素敵な異性だとしても、そういう食べ方をされると途端にひいてしまったり。
 今の職場では外国人のアルバイトの子が多く、中国やベトナムといった主に東南アジア圏出身者ですが休憩の時など賄いを一緒に食べたりすることが有ります。彼らのほぼすべてがそういった食事のマナーに関しては無頓着というか気にしていないようです。例外といえる唯一一人の女の子がクチャクチャと音を立てずに静かに食べていますが、多分彼らの意識の中に食事中音を立て食べてはいけない、というものは無いのではないかと思います。
 というようなことをある日考えていましたら、日本人であるワタクシがアジア人の彼らを見ているように、欧米人からも日本人の食事のマナーについて同じように見られているのではないかと気がついたのです。日本での食事では蕎麦やうどんなど麺類はズルズルと麺を啜り込み、音を立てて食べるものでは有りますが、欧米などでは麺、パスタなどは音を立てて啜り込むのはタブーとされています。また汁物はお椀を両手で持ち汁を啜り込むのが正式ですが、同じアジアでもお隣り韓国では器を持ってはいけないし、柄の長いスプーンで頂くのが正式ということを知った時は驚いたものでした。ヨーロッパなんかでもスプーンを使い音を立てずに静々と流しこむ感じですね。そういったこととは反対の日本人の食べ方は欧米人からすると衝撃的な光景なのかもしれません。このところ日本食がブームということで海外からの観光客が日本の食事を楽しむという光景を見ることが有りますが、麺類などをモグモグと食べているのはやはり異質な感じがします。
 以前というか、かなり昔の話ですがNHKのウルトラ・アイという科学情報番組が有りました。今の『ためしてガッテン』の前身とも言う番組でしたが、その中で何故日本人は味噌汁をズルズルと音を立てて飲むのか、という回がありまして、内容をかいつまんで申し上げると西洋のスープと日本の味噌汁、そもそも温度が違うというのです。スープはおおよそ65℃が適温とされ、味噌汁は75℃が適温とされその差は10℃。更にスープは平皿で供されす場合、温度が下がりやすいが味噌汁では決して平皿で供されることもなく、温度下がりにくいこと。そこで日本人が開発した"ワザ"が音を立てて啜り込むということ。番組内ではフラスコやガラス管を駆使して実験器具を組み立てて人間が啜り込む時と同じ条件を作り出して温度を計っていましたが、空気を一緒に啜り込むことで10度ほど下げられるという実験結果が有りました。
 とりとめのない文章になってしまいましたが、クチャクチャと音を立て食事をする方々とは、自然とご一緒しなくなるのですけれども(積極的には)、はたから見れば麺を啜るときに音を立てるのもダメなんていう意見も出てきているので、そういう意見が大勢を占めるようになれば、また世の中も変わるんだろうなぁと思う今日この頃なのです。