そして、そこには素晴しい温泉があった

渋川の街を見下ろして

 給油前の弱気な状態から一転、『もう、どこへでも行きまっせ』的に変貌したMさんは、意気揚々とハンドルを駆ります。もう見ていて面白いほどです。第一次捜索活動で、走っていた際にふと目にしていた天然温泉の看板が記憶に残っていたので、馬事公苑という世田谷にありそうな名前の公園を目指し走り抜けます。

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 馬事公苑はその名の通り、馬に関連する公園のためなのか県の畜産試験場の一角にあり、そこの前の4号線(上毛三山パノラマ街道)を山の方向に上ると暫らくして、先ほど見掛けた天然温泉の看板を発見。その直ぐ先を左折し、車を走らせます。通常こうした看板・案内板はこの先○○メートル、だとかあと○○メートルといった記述がなされていますが、ここでは見落としたわけでもなく書かれていませんでした。そうは言っても大概は500m前後でそれらしきものが見えるか、何かしらの次の看板が見えるのですが、サッパリそうしたものが見えません。

大きな地図で見る 不安に駆られながらも進むこと10分ほど、やっぱり引き返そうかと言い出しそうになった頃、ようやく次の案内板が出てまいりました。そこから何度か指示が出ている方角に曲がりようやくそれらしき場所に辿り着きました。最初の看板がAKAGI芝SportsのSの文字の場所ですから、いかに遠かったかお判り頂けると思います。

 急ごしらえのだだっ広い駐車場が畑のど真ん中にあり、その向こうに突如としていくつかの建物を擁する公園というかそんな感じです。畑の作物は一つはそば、もう一つは見慣れない葉っぱで、その地下茎を何か食べるもののようです。しばらく二人で考えていましたが判らず、駐車場に偶然居合わせた軽トラの農家の方に尋ねると、群馬といえばコンニャクでしょう、とさも当たり前のように教えて下さいました。ああ、そうかそうかと納得して、ようやく温泉に向かいました。

 入口の表示板には『ルンズ・ファーム赤城ぶどう園 ロマンの森倶楽部』と書かれていて女性が喜びそうなこそばゆくなる様なネーミングに若干の不安を感じながら整備された園内に入ります。それにしても周囲の畑とのギャップが激しい場所です。中には展望台もあり、そこからは向こうの街並を一望に出来、またすぐ下にはぶどうの木が一面に植わっている、一風変わった場所です。

 それにしても立派な施設内の建物はふんだんに木材が使われていて、トイレまでもが深呼吸したくなるぐらい木の香りが漂っています。最初は乙女チックだなぁと思っていたのですが、ここはなかなかのものです。しばらく園内を歩いてようやく入浴施設のところまでやって来ました。かなり園内は広いのです。まだ重機も端の方にあり、何かを作っているようです。

『天地の湯』と名付けられた温泉はチケット売り場の従業員さんのお話だとまだ9月の1日のオープンだそうで、道理で施設が新しいわけです。大人¥600を支払って内部に入ると、全て木で作られた建物が清々しく、パパッと服を脱いでいざお風呂へ。内風呂で身体を流して、と備え付けのボディソープで身体を洗おうとしますが、今ひとつ泡が立ちません。なるほど、ここは本物の天然温泉なのですね、弥が上にも期待が高まります。何度かお湯を浴槽から汲んで身体を流すと、外の露店風呂へGo!

 あまり広いとはいえないものの、10人ぐらいだとゆったり浸かれるぐらいの長方形の浴槽です。眼下にはぶどう畑が広がり、気持ちよい風が吹いています。湯温は熱くもなくぬるすぎもしない、長時間入っていられそうな温度でワタクシ好み。肩まで入って一度温まるといつものように半身浴。*1チロっと舐めると塩味がしました。
 いやぁ気持ちの良い風呂で、Mさんは目を瞑って瞑想に耽っているようです。いくらでも入っていられそうなのですが、ワタクシはこの後再びどこかの駅から電車に乗って東京に帰らなければなりません。その計算で風呂から上がろうとすると、もう上がるの?とMさん。クルマで移動している彼は脱衣場で身体を拭きながらその事に気が付いて、あ、そうかと納得顔。いやぁ、良いお風呂でした。
泉質:ナトリウム・カルシウムー塩化物温泉 低張性弱アルカリ性高温泉
源泉温度54.5℃(気温2.3℃)

 風呂から上がると、入口付近にあった売店(パン屋、酒屋、炭火焼のお店など)を冷やかしながら火照った身体を冷まします。酒屋さんは直営ではなくテナント契約で入っているお店で、焼酎の量り売りをしていました。そこのオバチャンの話によるとこの下にあるぶどう畑は醸造用(ワイン用)だそうで、じゃぁそのワインを扱っているのかと尋ねると、かなりのこだわりがあり無農薬で作られ、生産量も限られていて市場には殆んど出回らないとのことで、超稀少品だそうです。そうなると気になるものですね、後ろ髪を引かれながらそこを後にしたのでした。(まだ続く) 

*1:ワタクシは心臓があまり良くないので肩までしっかり浸かると息苦しくなるのです。