大森名店めぐり

お新香 鳥城 大森

 大井町の大繁盛店、立ち飲みの『肉のまえかわ』さんでスタートしたワタクシ達が選ぶ選択肢としましては、
・このまま大井町でぶらり飲み歩きを続ける
大井町の隣りである大森で馴染みのお店をめぐる
 という二つの案があります。正直どちらも迷いますが大井町はそれほど詳しくないしみやけんさんをご案内するには、大森の方が相応しいので、今回は大森に移動することにしました。まぁ、もっともみやけんさんが仕事で大森に降り立った時に、意外と良さそうなお店がありそうだ、と思ったのがこの大井町・大森ツアーの始まりなのですから異存があろうはずもありません。それにしても大井町大井町でまだまだ他にも良さそうなお店も沢山あるし、大森を挟んで向こうの蒲田はまた魔都ともいうべき誘惑の多い街ですから、この京浜東北線の沿線では大森は若干影の薄い街なんですが、やはり学生時代に過ごした思い出の詰まった街なのでどうしても贔屓目に見てしまうんですなァ。
 電車で一駅、大森にやって参りました。先ほどは肉だったので、今度は魚ということでどこかおススメは?の問いに、全天候型居酒屋ながら魚に強みを見せる大衆酒場富士川さんをまず外すことは出来ないでしょう。駅を降り立ち、とりあえずは南口を出たバスターミナル付近の飲み屋さん街をブラりとこんな具合ですよと顔見世をしながら辿り着きました、富士川さん。手前にはもう一店舗食事がメインのお店もあって、大森で安く、お腹一杯食べるとなると必然的に選択肢の中に入ってきそうなお店です。暖簾越しに見える店内のカウンターには殆んど空きがなく、一旦は二階へ、と押し上げられましたが一階のテーブル席を片付けてもらいそこへ席を構えました。この日はブラックボードにマダイ¥480、本マグロネギトロ¥380、かんぱち¥480、しゃこ¥380、ブリ¥380、ヒラメ¥380、生うに(箱)¥450などこれ以上はキリがないので画像を載せたほうが早いのでメニューをドン。
 これはあくまでもその日によって変わるおススメ品を書き出すボードですから、これ以外にも通常メニューがあります。それにしてもこの刺身の豊富さと安さといったらないですね。
 スズキ刺¥380とサンマ刺、確か¥380。スズキは羽田沖でも釣れるようですが、これがそうなのかは不明。結構歯応えがあり、臭みはなし。甘味も少なかったので〆たばかりなのかもしれません。サンマは対照的に脂もほど良く乗り、これは青背の魚特有の香りもありスズキとの対比が楽しめます。ショウガを添えてサッパリと頂きます。
 次いでやって来たのはサンマ塩焼き。刺身と焼き物を同時につまめるなんて、一人飲みなら叶わぬ夢です。自宅ではこの秋に何度も食べているので、感慨もありはしませんが、そろそろ脂の乗りも良くなってきているようです。それにしても去年のサンマは大きかったなぁと遠い目。
 先ほどはウーロンハイを、こちらではホッピーを立て続けに二杯も飲めば、みやけんさんと競うように交互にトイレへ立つ回数も増えようというもの。そろそろこちらのお店の良さも楽しまれたようなので、大森で煮込みといえば、のお店へと参りましょう。
 そもそも大森に住んでいる間には気がつかなかったお店ではありましたが、このように飲み歩くようになり大森で煮込みといえばまず筆頭に挙げられるお店、蔦八さんです。肉、魚を堪能してきた流れからすると、蔦八さんの煮込みというのは至極当然な流れと言えるでしょう、なんてね。しかし時刻はまだ20時半なれど、あいにくシャッターは無情にも閉ざされております。『都合によりしばらく休ませて頂きます』の文字が書かれた紙を押さえるテープは何度か補修されているようで、かなりの時間が経っていることを窺わせています。

 閉まっているのではどうしようもありませんから、次善の策として次のお店をひねり出し再びアーケード街を歩いて行きます。大森に3店舗ほどある『酒蔵 一番』さんのアーケード店でパチリ一枚。

 ワタクシが次にお連れしたのは、こちら鳥城さん。『とりじょう』なのか『とりしろ』なのか読み方はよく判りませんが、一度来て気に入りました。まぁ至って普通のオサーンパラダイスなんですけれどもね。目の前で焼き物をしていても全く煙くならない換気の良さは特筆ものです。というのもカウンターの向こうの焼き台のすぐそばに吸い込み口があり煙が他へ回るよりも先に吸い込んでしまうのですから。また炭火で焼かれているのでふっくらと焼きあがりやはり一味違います。





 二人とも煮込みの頭になっていたのですかさず注文した煮込み。オーソドックスなモツの味噌煮込みで、ほとんど脂が浮いていない超あっさり仕立て。大根・コンニャクと共に柔らかく煮込まれています。みやけんさんは大宮の『力』の煮込みは対照的に超コッテリでと二回ほど仰っていたから、こちらの煮込みは期待外れだったのでしょうか?ワタクシはその時の気分次第でどちらも好きですね。以前亀戸で食べた千登里さん(字は自信なし)の煮込みはコッテリでニンニクのトッピングが実にマッチしていたものです。




 焼き物が到着。そういえば最初のまえかわさんでも焼き物をつまんでいたので、本日二回目ですね(苦笑)。記憶では残っていないですけれど、写真を見る限りでは、シロとカシラ、タン辺りのようです。全て塩で頂きました。瓶ビールはサッポロ謹製黒ラベルです。錦糸町・両国・浅草界隈では隅田川のほとりにあるアサヒビール東京本社の影響力の強さもありアサヒが圧倒的に強いし、ここ大森でも10数年前までアサヒのビール工場があったので迂闊に頼むとスーパードライがやって来てしまいますので、苦手なワタクシには注意が必要です。
 お新香で口の中の焦げ味をさっぱりとさせて、もうそろそろ行きましょう。


 これからの季節嬉しくなるのが温かいおでんですね。昨冬お初にお目にかかりその静謐ともいうべき佇まいに魅了されたおでんの名店『すがた』さんです。ガラリと扉を開けるとおやまぁ女将さんが笑顔で迎えてくれました。顔を見てすぐに思い出してくれたようで、お久し振りの言葉にホロリと来てしまいそうでした。ここに来たらやはりビールではなくお酒をお燗で頂きたいものですね。それ以外の飲み物でも良いのですが、白木のカウンターに徳利が絵になります。

 奥の流しで盛られて来たキンピラのお通しをつまみながら、おでん種を選びます。キンピラも女将さんのお手製でしょう、チェーン系の安い居酒屋で出てくるような既製品とは一線を画す優しい味付けに後からピリリと辛い七味。燗のつけ具合もぴたりです。いささか酔っ払い気味ですが、静かにお話なさる女将さんと、穏やかなみやけんさんも満足して頂けたようでこちらもガイド役として大満足。今回は駆け足で巡りましたが、やはり馴染みの大森は第二・第三の故郷のようです。帰りに寝過ごさぬよう秋葉原までご一緒してみやけんさんと別れを告げ、総武線に乗り換えの階段を駆け上がりました。