死神を葬れ/J・バゼル他

 前回読んだ本の記録をつけた時に読み始めていたのは、こちらの本。

死神を葬れ (新潮文庫)

死神を葬れ (新潮文庫)

 病院を舞台にしていながらクスリや拳銃がふんだんに散りばめられた異色の内容。最初は何が何だかよく判らない展開で、じれったいようでもあったけれど、展開が飲み込めてくるにつれて面白くなって来ました。こういう作者だけが判っている話の断片を少しずつ見せられるような小説が最近多くなってきているような気がしますが、どうも苦手なタイプのような気がします。少々話の運びにおふざけも混じっていてそれが素直に受け容れられない要因の一つかも。
 本とは言えないものの、一応記録として残しておきたいもの。
酒のほそ道 6 (ニチブンコミックス)

酒のほそ道 6 (ニチブンコミックス)

魚心あれば食べ心 鮮魚の巻 (ドンキーコミックス)

魚心あれば食べ心 鮮魚の巻 (ドンキーコミックス)

 以上全てラズウェル細木氏の漫画です。最初の『酒のほそ道 6』は以前も持っていたのに手放した物を買い直し。これで7・8・9・10を残すのみ。久し振りに読んだけれどあらかた覚えているようでも、飲兵衛の心理を巧く点いているのでついついニヤニヤ。自宅ならいいけれど外で読む時は用心しなくては( ゜д゜)ハッ!
 26巻は最新です。こうした漫画は酒場で手持ち無沙汰のために酒を飲みながら読むというのが実に良いのですねぇ。行きつけのお店でも店員さんがいつも相手をしてくれるとは限らないので、こうした本や漫画があると手慰みに良いものです。
 『魚心あれば食べ心』は『酒のほそ道』とは違うキャラクターで、以前から興味を持っていましたがコンビニで偶然見付けてゲット。岩間宗達氏とは違うお魚大好きの主人公は岩間宗達氏以上に魚に対してのこだわり、執着、ウンチク等など怖いぐらいです。しかし、顔を見せない奥さんのキャラクターがそこら辺を上手くカバーしていて、本当ならこんな旦那なら愛想尽かして当然だなと思いつつ奥さんにエールを送りたくなります。 大沢在昌氏といえば『新宿鮫』でつとに有名ですが、読んだのか読まないのか記憶に残っていません。読めば思い出すのでしょうが、氏の名前だけは憶えていました。
 全く何の先入観も持たずに読みましたが、近未来のやや荒廃した東京とそのすぐ近くに作り上げられた人工島、そこを拠点とした"ムービー"産業にまつわる話。どうも感情移入しにくくどこか醒めた目で作品と向き合ってしまったせいか読み終えても、『ふうん、あそう』ぐらいの感想しか持ち得ませんでした。とにかく前半がハードボイルドを標榜したがっている雰囲気が強く、もう少しこなれた文体の方が好みかも。無理に強がっているというか、力み過ぎなんですよねぇ。
ジウ〈1〉―警視庁特殊犯捜査係 (中公文庫)

ジウ〈1〉―警視庁特殊犯捜査係 (中公文庫)

ジウ〈2〉―警視庁特殊急襲部隊 (中公文庫)

ジウ〈2〉―警視庁特殊急襲部隊 (中公文庫)

ジウ〈3〉新世界秩序 (中公文庫)

ジウ〈3〉新世界秩序 (中公文庫)

 普段洋物の作家ばかり読んでいて日本の作家にはあまり興味を示さない*1のですけれども、いつものようにこれも我が社の社長から回って来た本ですけれども、これには参りました。三冊続き物で年末から読み始めたのですが、一気に読み終えてしまいました。これは傑作です。読んだ後に深い満足感に浸ることが出来ました。内容的には警察物ですが、老練の刑事が犯人を追い詰めたりとかではなく、全く対照的なキャラクターの女性刑事が主人公で、そこに熱血漢一歩手前の男性刑事、冷酷無比の殺人犯とそのバックに暗躍する組織が何とも不気味で、誘拐、脅迫、殺しがふんだんに盛り込まれ暴力的要素や警察内部の特殊な組織体系や人間関係が絡み合いますけれども、話の展開が巧みで実に面白く読めました。かなりグロい描写が盛り込まれているのでそういうのが苦手な人にはおススメ出来かねますが。後半、混乱の極みの状態の収拾をどうつけるかと思いましたが、やや甘い決着の仕方はどんどんと無秩序状態を作り出していく描写に較べればやや雑な展開に感じました。本当の最後の最後、主人公の女性刑事と少年の会話の件はやや余分な気もしましたが、それはあまり本編の評価とは結びつかないぐらいのことで。
 それにしてもこの作者誉田哲也氏は初めて読みましたがこれだけの傑作を書いてしまったら次作のハードルがかなり高くなるのでは?と余計な心配もしたり。