浅草昼酒めぐり

浅草のあと、両国にておでん

 さて、朝御飯をしっかり食べたために、昼でもそれほど空腹感を覚えずにズルズルと食べるタイミングを逃していたワタクシでありますが、ここへ来てようやく空腹を感じ始めました。
 浅草のWINS(場外馬券場)をグルリと囲むように、往時の大歓楽街の様相を呈する六区。映画館では30年以上も昔の映画や'90年代の洋画、そして今尚現役でピンク映画も上映されています。そしてその隙間を埋め尽くすかのように飲食店があちらこちらに存在し、競馬中継を熱心に見つめる人生の先輩諸氏の姿があります。
 目当てのお店は特に決めてはいませんでしたけれども、何となくひさご通りの入り口付近にある『三ちゃん』というお店に入ろうかなぁと漠然と思っていました。開け放たれた入り口の方にTVがあるのか、お客さん達がみんなこちらを見ているので何となく入りづらく、一丁ここは手頃な立ち飲み屋さんで景気をつけようと、以前からチェックしていた『立飲処 まい』というお店に足を向けました。
 ちょうど映画館の裏側の通りにありまして、店頭で焼き物を焼く煙がたなびく、奥に細長いお店です。中に入り、ホッピーを頼むとキッチリ霜を吹いたジョッキに冷やした焼酎と氷が入り、ホッピーの瓶が添えられ¥400なり。近くの煮込みストリートではこのホッピーが¥500〜600もする場合もあるので、むしろこの国際通り裏の『立ち飲みパラダイス』ともいえるこの通りの方がワタクシの好みに合います。もはや観光地化した煮込みストリートは『観光地は値段が高い』の法則が当てはまります。





 焼き物はカシラと砂肝。それぞれ¥100です。これも関東の呼び方でカシラはツラミ・コメカミの呼び方で分類され、砂肝はズリ・砂ずりの名で呼ぶところも地方によってはあるようです。ワタクシはこの砂肝が大の好物。ゴリゴリした歯応えが堪りません。塩でサッパリと焼いて頂きますが、これもタップリ七味を振り掛けるのが良いです。お店によっては練り辛子を添えてくれるところもありますが、どちらも好きです。

 メニューを眺めていると、目に留まったのがこちらの豚玉きくらげ炒め¥300。そのものズバリのネーミング。でもこれがなかなかの逸品なのです。加熱し過ぎないフワフワの玉子にシャッキリ感も残る玉ねぎ、そしてコリコリしたきくらげで軽く塩味で味付けしています。ホッピーの中¥100も二回お替りして、キャッシュオンで支払い、合計¥1,100の明朗会計。実に満足してお次のお店へ移動します。
 この通りはかなり気に入っているので、ぶらりと歩いてみます。メインレース直前ということもあり、立ち飲み屋・居酒屋さんはどこもかしこも混雑しています。
 ということで、初志貫徹『三ちゃん』へ参ります。もう景気付けは済んでいるので、TVを見つめる酔客の視線も気になりません。こちらのお店は以前より何かの本で読んで知っていましたが、入るのは初めてなんです。もの珍しげに映らないように、そっとメニューを眺めながら酎ハイとカクテキをチョイス。手馴れた熟練の店員さんがサッと手渡してくれます。メニューや酒瓶の並ぶ棚を見ていると見慣れないしょっつる(塩汁:魚醤)の瓶があったりと、秋田のご出身なのでしょうかね。そうそう、急に思い出しましたが目の前には秋田の『美酒 爛漫』が置いてありついつい頼んでしまいそうになります。

 もう一杯酎ハイを頼み、カクテキを片付けるとまだたっぷりとグラスに残っているので、目の前で沸々と静かに煮えて美味そうな煮込み¥500を頼みます。こちらのは牛すじを醤油味で煮込んだもの。良く味の染みこんだ豆腐が堪りませんね。北千住の大はしの煮込みと同スタイルながら甘さは幾分控えめのお味でした。こちらのお店もお気に入りになりました。
 今回は新規開拓で二軒続けて良店発掘でき気分も上々。ハシゴするには理由に事欠かないですね、良いお店が見つからなければ当たりを引くまで探してハシゴしたり。



 『三ちゃん』を出ると、国際通り方面に少し歩いた、ひさご通りの一本裏手の通り。貞千代さんのある通りです。何となく記憶に残っていたお店で競馬のお客さん達が詰め掛ける『たつちゃん』。レースが終わったので、お客も引けたのかすんなり入れました。中は奥のTVを見るように席の殆んどがまるで学校のようにTVの方を向いています。店先で焼き物を焼いている店員さんに促されるように入ったのは、驚きのセットがあるからなのです。

 午後5時までではありますけれども、生ビールセット¥500やウーロン・レモンハイセット¥450あたりはそれほど他のお店と変わりませんが、お酒セット¥300には驚いてしまいました。お酒(日本酒)と焼き物2本が付いてこのお値段。焼き物は¥80/本ということなので2本で¥160、¥300から差し引くとお酒は¥140ということになりますね。これはあくまでも単純計算ですからこういう訳には行かないのでしょうけれど、今のデフレの世の中の流れでこうなっているのではなさそうです。

 こんな場合はお酒は本醸造だ純米だなんて言っていないで素直に出されたものを楽しむのみ。っていうかもうすっかり心地良くなってしまっていたのですね。それだけで出るのも悪いですが、今回はこれにて打ち止め。またまた今後楽しみなお店です。地元の友人からメールが届きそちらの方へ向かうことにして浅草の地を後にしたのでした。(ってまだ飲むんかい?)