ぬか床づくり

ぬか床

 さていよいよ今年も押し詰まってまいりました。暮れになると毎年恒例のぬか床作りが始まります。毎朝美味しい、そして時にはそれ程でもないぬか漬けを届けてくれるぬか床ですが、ワタクシは一年に一回作り替えるようにしています。世間一般的にはン十年もののおばあちゃんのぬか床、なんて謳い文句にしてあるものもあったりしますが、ワタクシが気になったのは以前Wikipediaに載っていたひと文*1。論旨としては『漬け込む野菜、そしてヌカそのものには残留農薬があり、野菜を洗ったとしてもそれを毎日漬け込むことによりぬか床には微量の農薬が蓄積する危険性は否定出来ない』というもの。うん、なるほどと思ったワタクシはそれ以来一年に一回作り替えるようにしています。

 ぬか床を一から新規に作るのはかなりの時間が掛かるのですが、それでも古い熟成したぬか床を一握り残しておいてそれを新たに作ったぬか床に混ぜ込むことによって、比べ物にならないぐらい早くぬか床が復活するのです。こちらがその殆どが捨てられることになる古いぬか床。一時期あまり良くなかったのですが、秋頃からまた手を掛けて復活を見事に遂げたもので、捨てるのは忍びないのですけれど、先述の理由から仕方がありません。
 一度煮沸したお湯を冷まして人肌程度になったら、そこに塩を大量投入。大体10%程度の塩分を目安に調整しておきました。
 ワタクシがぬか漬け用に使っている容器は、99円ショップなどで手に入る3Lの密閉容器。目安としてはきゅうりを折ったりしないで漬けられる大きさなら良いと思います。昔はやはり100円ショップのパン用の密閉容器も使ったことがあります。考えてみるとかれこれ10年近くぬか漬けをやっているんだなぁ(しみじみ…)。
 左下に水の溜まっているところがありますが、これは野菜からぬか床の塩分により浸透圧で滲み出した余分な水分。ぬか床の一部をこのようにして避けておいて、そこの部分を下になるように少し傾けておくと、一晩でこれぐらい滲み出してくるので、それを捨ててまたひと混ぜ。あまりにぬか床が柔らかいようなら、新しいぬかや辛子を足して硬さを調整すると良いです。辛子はもちろん、チューブタイプのものではなく、粉末のものです。市販のものとしては『ぬかみそからし』というものが広く出回っていますが、容量が少ないし、別にこれに拘る必要など無いのでワタクシはごく普通の粉末の辛子を買っております。水で練ると練りカラシになるアレです。ここで注意が必要なのは、パッケージを良く読まないと、増量材としてでんぷん等が添加されているものがあるということです。ワタクシが選んだものはカネクの洋がらしというもので、辛子の色を綺麗に見せるためにターメリック(ウコン)が添加されていますが、これはむしろ肝臓にもよろしいのでむしろ好ましいと思います。和がらしと洋がらし、どちらでも良いのですが和がらしの業務パックはやや高いかあまり見掛けないようです。

 月曜日の朝に仕込んだ新しいぬか床。ぬかはスーパーでももちろん売っていますし、精米機が備えてあるお店なら一声掛ければ無料で分けてくれます*2。ワタクシは幸いにして比較的近所に米屋さんがあるので、そこで分けてもらっています。味噌よりも固めにしたぬか床にきゅうり、キャベツを漬け込んでこの日はおしまい。キャベツやカブは水分が多く、ぬか床づくりをしている際には欠かせない野菜です。翌日漬かった野菜を取り出し、底からよく混ぜあわせて、次の野菜を漬けます。今の季節は大根なんかも良いですね。古いぬか床からお引越ししてきた乳酸菌いっぱいのぬかが入っているので、まっさらの新規のぬか床とはぜんぜん違う、酸味を帯びたにおいがしているのが判ります。それでも漬け上がった野菜を切って食べても、この段階ではまだまだ味わいは浅く、美味しいものではありません。まぁ食べられるものである、という認識のほうが安全です。
 それでもこのまま何日かよくかき混ぜてやることによってきっと一週間後ぐらいには乳酸菌も程良く増えてしっかりとしたぬか床になってくれることを期待しましょう。
 また昨日も訪れたのですが、御徒町の金魚という焼酎に力をいれている居酒屋さんのママさんに教わったのは、以下のとおり。

  • 風味を増すと言ってよく入れられることの多い昆布や、ビールなどの余計な物を入れたりしない。下手に入れると雑味の元になる。
  • 糠は一般的には炒り糠が市販されているが、生の糠の方がすっきりした味になる。

 またワタクシが色々と試して分かったのは、やはり塩分量の重要性。漬けているうちにどうしても野菜に塩分を取られてしまい、ぬか床の塩分量が下がります。漬け込む野菜に塩を摺りこんでから漬け込むと良いのですが、それでもふと気がつくとどうも漬け上がりが遅くなったりと感じたりすることがあります。また表面の色が鈍い色になることが多々ありますが、混ぜ込むと分からなくなります。しかし、においもあまりいいとは言えなくなってきたら、味を見てみるとやはりぼやけた味。思い切って塩と辛子を混ぜ込み何日かするとぬか床が復活してくれます。薄味・減塩が尊ばれる昨今ですが、あまり低塩だとぬか床自体が痩せてしまうようです。ぬか床の味見というのは気後れがするものですけれども、なぁに、かき混ぜた後の手をペロリとやって口の中がモソモソしますが水で口をゆすげば良いのです。

*1:今では削除されてしまった模様

*2:お店にとってはただのゴミですから